2003 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト配偶子形成過程の分子移伝学的解析(生殖補助技術におけるゲノム刷り込みの影響)
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15591761
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
増崎 英明 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (00173740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 大介 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (50315248)
吉村 秀一郎 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (00274663)
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Keywords | 生殖補助技術 / 成熟嚢胞性卵巣奇形腫 / ゲノム刷り込み / Ube3a / ノックアウトマウス / 卵子形成過程 |
Research Abstract |
本年度は、皮様嚢胞腫の卵子形成過程における発生時期分類と腫瘍でのゲノム刷り込み遺伝子の発現解析を行った。 1.発生時期分類 組織学的に皮様嚢胞腫と診断し、正常染色体核型であることを確認した79例を対象に、計20種類のマイクロサテライトマーカーを用いて、オートシークエンサーで遺伝子型を決定した。患者血液と腫瘍の遺伝子型を比較して、腫瘍の発生時期を同定した。すなわち、染色体着糸点近傍のinformativeマーカー(患者血液の遺伝子型がヘテロ接合)で、腫瘍の遺伝子型がホモ接合のものをIと分類し、ヘテロ接合のものをIIと分類した。つぎに、腫瘍の遺伝子型を、腕中間部から遠位部のinformativeマーカー間で比較し、腫瘍の遺伝子型が異なるもの(ホモ接合からヘテロ接合への変化あるいはその逆)を組み換えと判定した。そして、組み換えを複数の染色体かつ複数の遺伝子座で認めたものをIbもしくはIIb、同じく組み換えを認めなかったものをIaもしくはIIaとした。 79例の皮様嚢胞腫のうち、Iaに分類されたものは22例,IIaは18例,Ibは27例,IIbは3例,そして分類不能例は9例であった。 2.SNRPN,H19,MESTおよびUBE3Aの発現解析 SNRPN,H19,MESTおよびUBE3Aの各遺伝子特異的PCRプラィマーを用いてquantitative real-time RT-PCRを行い、各発生時期の腫瘍およびそれぞれの患者血液細胞における遺伝子発現量を計測した。定量系はSYBR Green PCR Assayで行い、使用機器はABI 7900 sequence detection system (Applied Biosystems)を用いた。発現レベルは、体細胞との比(腫瘍における発現量/血液における発現量)で評価した。 母性発現するH19の腫瘍における発現レベルは、0.93±0.15から1.89±0.08の範囲であった。卵子形成過程における腫瘍の発生時期と比較すると、時期が成熟するにつれて高発現していた。一方、父性発現するSNRPNおよびMEST-1の腫瘍における発現レベルは、それぞれ1.17±0.05から0.21±0.04および0.96±0.03から0.11±0.04の範囲であった。時期が成熟するにつれて、体細胞レベルから次第に低発現へと変化していた。よって、ゲノム・インプリケンティング遺伝子の発現レベルは、卵子形成過程における腫瘍の発生時期が成熟するにつれて次第に成熟卵の発現パターンを示すことが示唆された。これは、腫瘍の発生時期が成熟するにつれて、腫瘍におけるH19のメチル化レベルは次第に低メチル化し、SNRPNのそれは高メチル化していたメチル化解析の結果と一致していた。 一方、脳細胞特異的に母性発現するUBE3Aの腫瘍における発現レベルは、0.91±0.14から1.12±0.13の範囲であった。発生時期に関係なく血液細胞と同じ発現レベルを呈していた。これは、本遺伝子が組織特異的インプリントを受けることに由来しているものと思われた。 以上より、皮様嚢胞腫は、卵子形成過程の各時期より発生していた。本腫瘍におけるゲノム・インプリンティング遺伝子の発現レベルは、発生時期が成熟するにつれ、次第に成熟卵の発現パターンを示すものと示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] H Masuzaki, K Miura, K-I Yoshiura, S Yoshimura, T Ishimaru: "A monozygotic conjoined twin pregnancy discordant for laterality of cleft lip"Gynecologic and Obstetrics Investigation. 57(2). 100-102 (2004)
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[Publications] H Masuzaki, K Miura, K-I Yoshiura, S Yoshimura, T Ishimaru: "A monozygotic twin pregnancy discordant for acardia and X-inactivation pattern"European Journal of Obstetrics and Gynecology and Reproductive Biology. (In press).
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[Publications] H Masuzaki, K Miura, K-I Yoshiura, S Yoshimura, N Niikawa, T Ishimaru: "Detection of cell free placental DNA in maternal plasma : direct evidence from three cases of confined placental mosaicism"Journal of Medical Genetics. (In press).
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[Publications] K Yamasaki, K Joh, T Ohta, H Masuzaki, T Ishimaru et al.: "Neurons but not glial cells show reciprocal imprinting of sense and antisense transcripts of Ube3a"Human Molecular Genetics. 12. 837-847 (2003)
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[Publications] KN Khan, H Masuzaki, A Fujishita, M Kitajima, I Sekine, T Ishimaru: "Immunoexpression of hepatocyte growth factor and c-Met receptor in the eutopic endometrium predicts the activity of ectopic endometrium"Fertil Steril. 79. 173-181 (2003)
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[Publications] KN Khan, H Masuzaki, A Fujishita, M Kitajima, I Sekine, T Ishimaru: "Differential macrophage infiltration in early and advanced endometriosis and their adjacent peritoneum"Fertil Steril. (In press).