2003 Fiscal Year Annual Research Report
急性中耳炎の難治化の危険因子と薬剤耐性菌の伝播に関する研究
Project/Area Number |
15591828
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
保富 宗城 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90336892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 一真 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (80336891)
田村 真司 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10244724)
山中 昇 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (10136963)
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Keywords | 急性中耳炎 / 薬剤耐性菌 |
Research Abstract |
1.急性中耳炎難治化に関与する危険因子の検討 368例小児急性中耳炎患児(10〜86ヶ月、男児200例、女児168例)を対象に、臨床経過を臨床症状(耳痛、発熱、涕泣/不機嫌)および鼓膜所見(発赤、膨隆、光錐減弱/混濁)よりなるスコアーリング・システムを用い点数化することにより評価した。 (1)鼻咽腔検出菌と急性中耳炎重症度および臨床経過 肺炎球菌検出例では、重症例が多く難治例が認められた。一方、病原菌が検出されない場合、モラキセラ・カタラーリス菌検出例では、軽症例が多く認められ臨床経過は良好であった。 (2)臨床経過に関与する危険因子 5病日に臨床症状が残る危険因子としては、2歳以下の低年齢、初診時の重症例、鼻咽腔肺炎球菌検出例が危険因子と考えられた。ロジスティック回帰解析による検討では、オッズ比は、低年齢:9.64、初診時臨床症状の重症度:0.28であった。 (3)鼓膜所見に関与する危険因子 28病日に臨床症状が残る危険因そとしては、2歳以下の低年齢、初診時の重症例、鼻咽腔薬剤耐性肺炎球菌検出例が危険因子と考えられた。ロジスティック回帰解析による検討では、オッズ比は、低年齢:3.68、薬剤耐性肺炎球菌の検出:1.9であった。 (4)重症例におけるアモキシシリン治療の有効性に関与する危険因子 アモキシシリン治療にて改善しない危険因子は、低年齢、初診時の鼓膜所見の重症度、薬剤耐性肺炎球菌が考えられた。 (5)軽症例におげる抗菌薬の必要性に関与する危険因子 軽症例において抗菌薬治療が必要となる危険因子としては、低年齢、初診時の鼓膜所見の重症度、鼻咽腔より病原菌が検出されないことが考えられた。 2.起炎菌の薬剤耐性遺伝子の検索 小児急性中耳炎患児鼻咽腔より検出された肺炎球菌の約30%にペニシリン結合蛋白遺伝子(penicillin binding protein:pbp1a,pbp2x,pbp2b)に変異を認める薬剤耐性肺炎球菌が検出された。また、pbp3遺伝子に変異に認めるβラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌が約20%に検出された。 3.耐性菌の伝播に関する分子生物学的検討 急性中耳炎兄弟発症例では、パルスフィールドゲル電気泳動法において同一の菌株が検出され、兄弟間における起炎菌の伝播が考えられた。また、急性中耳炎患児の中耳貯留液、鼻咽腔より同時に検出されたインフルエンザ菌、肺炎球菌の約90%で同一の菌株が検出され、鼻咽腔より耳管を介した中耳感染が確認された。
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