2004 Fiscal Year Annual Research Report
部分脳虚血モデルに対する高体温前処置の脳保護効果とその機序
Project/Area Number |
15591918
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
白川 洋一 愛媛大学, 医学部, 教授 (90134600)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相引 眞幸 愛媛大学, 医学部, 助教授 (70148162)
秦 龍二 愛媛大学, 医学部, 助教授 (90258153)
出崎 順三 愛媛大学, 医学部, 講師 (00036451)
|
Keywords | 脳虚血 / プレコンディショニング / 虚血耐性 / 高体温 / アデノシン受容体 / Stat 3 |
Research Abstract |
ラットの部分脳虚血(中大脳動脈閉塞)実験モデルを作成し、高体温誘導による脳虚血耐性はプレコンディショニングから18時間ないし24時間で出現し、48時間では消失することを確認した(24時間で対照群の31%まで減少)。これに、選択的A1受容体阻害剤8-cyclopentyl-1,3-dipropylxanthine(DPCPX)を前投与しておくと、高体温プレコンディショニングによる脳虚血耐性の誘導効果を半減し、アデノシン受容体が虚血耐性の獲得にポジティブな役割をはたすことを示唆した。さらに、Stat3のwild typeやそのdominant negative typeを組み込んだアデノウイルスベクターを作成し、初代培養神経細胞やグリア細胞にStat3のwild type(St3.Wt)やそのdominant negative type(St.DN)、及びレポータ遺伝子(LacZ)を強制発現させ、その効果を検討した。その結果、初代培養グリア細胞にSt3.Wtを強制発現させると細胞死が促進され、細胞死に陥る直前にはグリア細胞でcaspase-3活性が上昇した。一方、神経細胞に上記のウイルスベクターを用いて強制発現させても有意な変化は認められなかったが、強制発現後の神経細胞をマイクログリアと共培養すると、共培養後3日目にはSt3.Wtを強制発現させたニューロンで細胞死の促進効果が見られた。更にラット脳に定位手術的にウイルスベクター(St3.Wt, St3.DN)を前脳に打ち込み強制発現させ2日後に局所脳虚血負荷を与えると、Stat3のwild typeを事前に強制発現させた群で有意に脳梗塞層の拡大が見られた。以上の所見は、脳虚血時のStat3の活性化は脳細胞死を促進する方向に進む事を示唆した。脳虚血時のサイトカインシグナル伝達異常が脳虚血を増悪させるという全く新しい病態概念が導入され、脳における虚血耐性現象の分子機構の解明に新たな知見を加えると考えた。
|