Research Abstract |
抜去後冷凍保存したヒト歯から切り出したエナメル質切片をテフロン製モールドに包埋し,エナメル質表面を歯科用漂白剤ハイライト(松風)にて処理した.処理後のエナメル質表面をフッ素配合歯面研磨剤とシリコーンカップにて表面清掃した試料,その歯磨剤の含有フッ素化合物であるモノフルオロリン酸ナトリウム溶液のみで処理した試料およびシリコーンカップのみで清掃した試料をそれぞれ0.05%ブドウ皮色素水溶液中に,37℃で1ヵ月間浸漬した.また,ハイライト処理後,そのままブドウ皮色素水溶液中浸漬(以下,色素浸漬)した試料をコントロールとした.色素浸漬前後のエナメル質表面の色を分光測色計CM-2600d(コニカミノルタ)にて計測し,浸漬前後のL^*,a^*,b^*値をそれぞれ算出した.一方,臨床において,実際にハイライトにて漂白を行った患者の漂白前,漂白直後および1年経過後の歯冠色を歯科用色彩計ShadeEye(松風)にて計測し,L^*,a^*,b^*値をそれぞれ算出した. その結果,エナメル質切片の色素浸漬後の試料はいずれ条件でも.L^*値が浸漬前より小さくなく,a^*およびb^*値は大きくなった.色素浸漬前後のL^*,a^*,b^*値から求めた色差(ΔE^*ab)は,フッ素配合歯面研磨剤あるいはモノフルオロリン酸ナトリウム溶液にて処理した試料群で,コントロールに比べて小さかったが,歯磨剤を使用せずシリコーンカップのみで清掃した試料群では,コントロールと差が認められなかった.このことから,モノフルオロリン酸ナトリウム溶液処理による色素沈着抑制効果が示唆された.また,計測条件が異なることから,直接的に比較することはできないが,臨床における漂白直後と1年経過後のL^*,a^*,b^*値の変化は,a^*値については,固体差が大きく一定の傾向は認められなかったが,L^*値は小さくなり,b^*値は大きくなったことから,L^*およびb^*値については,エナメル質切片の色素浸漬の結果が参考にできるのではないかと考えられた.
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