Research Abstract |
I.目的 高齢者の義歯治療を評価するために本研究では,年齢,性別,義歯使用年数と顎堤の吸収状態をマッチングさせ,インプラントオーバーデンチャー装着者と全部床義歯装着者の治療効果を,チェアサイドでの機能評価表を用いて明らかにすることを目的に研究を行った. II.方法 被験者は下顎無歯顎インプラントオーバーデンチャー装着者10名(IOD群)と下顎全部床義歯装着者35名とした.まず,IOD群と下顎全部床義歯装着者35名を各種機能評価表((1)義歯評価表,(2)咀嚼機能評価表,(3)満足度評価表)を用いて比較検討を行った.次に,両群間で年齢,性別,現義歯使用年数,顎堤吸収の状態をマッチング因子としてマッチングテストを行い比較した. III.結果 全部床義歯装着者35人の内訳は,平均年齢71.7歳,男性15名,女性20名,義歯使用年数38.1ヶ月,顎堤スコア36.6点であった.IOD群の内訳は,平均年齢60.8歳,男性3名,女性7名,現義歯の平均使用年数27.0ヶ月,顎堤スコア20.0点であった.マッチング因子の適合率は,4項目平均で70.1%であった.また,両群の各機能評価のスコアを比較した結果,満足度評価において有意差は認められなかった。 各機能評価のスコアを比較すると,CD群((1)義歯評価:67.3,(2)咀嚼機能評価:38.5,(3)満足度評価:54.7)に対してIOD群((1)義歯評価:93.9,(2)咀嚼機能評価:77.0,(3)満足度評価:80.8)はすべての機能評価で有意に高い値を示した(P<0.05). IV.結論 本研究において,全部床義歯とインプラントオーバーデンチャーの治療効果の判定に,顎堤状態を加味したマッチングテストの有用性が示唆された. また,全部床義歯と比較して,インプラントオーバーデンチャーの治療効果が高いことが明らかとなった.
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