Research Abstract |
アクリル系軟質裏装材の総義歯装着者に対する臨床効果を判定する目的で,平成15年から平成18年の期間で無作為割付臨床試験を計画した.平成16年から18年までに37名の無歯顎患者を下顎通法義歯使用群(通法群)へ,37名の無歯顎患者を下顎軟質裏装材使用義歯群(軟質群)へ無作為割付を行った.義歯装着前に通法群では,1名,軟質群では3名の被験者がドロップアウトした.ドロップアウトの理由として,体調不良,治療の意志の消失などがあげられた.本研究のアウトカムは短期(初回アポイント時),中期(義歯調整完了2ヶ月後),長期(1年,2年,3年後)に大別されている.短期アウトカムについての分析をもとに,アクリル系軟性裏装材が総義歯患者に及ぼす臨床効果の研究-痛みと褥瘡について-,アクリル系軟性裏装材が総義歯患者に及ぼす臨床効果の研究-装着後における短期患者満足度について-の演題で第ll5回日本補綴歯科学会学術大会にて発表を行い,発表の一部はJournal of Oral Rehabilitation にClinical effects of acrylic resilient denture liners applied to mandibular complete dentures on the alveolar ridgeの表題で投稿を行い,現在印刷中である. 以下に,本研究の結果の一部を示す. 1.通法群と軟質群の患者特性(年齢,顎堤条件,無歯顎期間,旧義歯使用年数,性別)に差は認められず.本研究における無作為割付は,良好に行われていた. 2.軟質裏装材を使用することで,初回調整時の下顎顎堤の支持領域と義歯辺縁部の褥創数は,通法義歯に比べ減少するが,小帯部の褥創数は差がなかった. 3.軟質裏装材を使用することで,初回調整時における患者の痛みに関する訴えは,通法義歯に比べ減少した.
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