Research Abstract |
本研究の目的は,摂食・嚥下障害のある無歯顎高齢者を対象としたSwalloaid(嚥下補助床)を開発し,摂食・嚥下障害の予防とリハビリテーションに臨床応用することである.2年度にわたり,(1)設計,作製方法の開発,使用材料の検討,(2)顎位と姿勢の変化が舌運動に及ぼす影響の検討,(3)嚥下時の口唇・顎運動に及ぼす影響の検討,(4)顎位の変化が捕食時および嚥下時の口唇圧に及ぼす影響の検討,(5)痴呆高齢者のSwalloaid受容に関する検討,を行った.その結果,(1)Swalloaidの作製にはシリコン材料が最も適しているが,適切な接着剤はなく,開発の必要性が示された.(2)顎位と姿勢の変化が舌運動に及ぼす影響の検討では,Swalloaidの装着時,未装着時における舌運動動態を,圧力センサおよび超音波診断装置(東芝SSA-320A)を用いて検証した結果,無歯顎では舌の力を強くし,大きく動かすことにより嚥下のための代償作業を行っていることが推察された.また上顎のみ装置装着であっても垂直的顎位の保たれることにより嚥下動作の補助になるものと考えられた.(3)嚥下時の口唇・顎運動解析の方法として,3次元画像解析装置とハイスピードビデオを用いて顔面皮膚上標点の運動経路の3次元解析を行い,切歯点での開口運動を皮膚上点から推測する方法を確立した.(4)顎位の変化が捕食時および嚥下時の口唇圧に及ぼす影響について,臼歯部の咬合支持のない状態では,口唇閉鎖に必要な口唇圧に過剰な負荷がかかることが示唆された.(5)痴呆高齢者のSwalloaid受容に関しては,歯科治療の受容困難者であっても,歯科衛生士による専門的口腔ケアを行うことで,受容できうる可能性が示唆された. よって無歯顎高齢者におけるSwalloaidによる顎位の保持は,摂食・嚥下機能の援助に有用であり,広く臨床応用することで多くの嚥下障害を予防することに寄与するものと考えられる.
|