2003 Fiscal Year Annual Research Report
神経難病患者の自己決定とQOL向上を目指した看護職の介入方法・システム構築の確立
Project/Area Number |
15592315
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
西田 厚子 滋賀県立大学, 人間看護学部, 講師 (10324568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西島 治子 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (70283554)
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Keywords | 神経難病患者 / 看護介入 / QOL / 地域ケアシステム |
Research Abstract |
神経難病患者のQOLの構成要素の検討と看護ケアの介入研究の実施 都道府県型保健所の2保健所の協力を得て、特定疾患公費負担制度利用者の中から、神経難病3疾患(筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、パーキンソン病)患者20例を選定し、研究協力の依頼を行った。研究協力が得られた患者・家族への聞き取り調査を実施した。さらに、難病患者会・パーキンソン教室などでの参加観察をもとに個々の患者のQOLの構成要素と難病患者の病む体験の意味を検討した。 その結果、神経難病患者は慢性疾患患者と同様に、病気の慢性的状態がもたらす問題が多様でかつ複雑であるため、QOLを維持するためには、患者および家族は、諸々の角度からそれらの問題を管理し、対処していかなければならず、それは家族間の不調和の大きな要因であった。一つには、神経難病患者は身体的不自由さがもたらす家族の介護負担の増加をおそれ、治療に対する自己の意志を表現しない傾向であることがある。このことから、看護職の介入計画は、まず、患者の病む体験の意味を理解することが必要であることがわかった。そして、患者および家族間に生じているであろう「難病」という病みの認識の差異は様々あり、患者および家族それぞれに面接することで浮き彫りにできることがわかった。そして、この患者および家族の語りそのものが看護ケアとして治療的な意味合いをもつものであると考えられ介入計画を立案し、現在継続的に保健師、訪問看護師らの看護ケア担当者の日常的な看護ケアに取り入れている。その介入結果については定期的に事例検討会をもちモニタリングしている。 また、患者および家族間に見いだされた病むことの意味の認識の差異は、患者と医療関係者間にも現れ、治療方針の選択の機会を失いがちであったり、医療処置を拒否するという患者の行動として観察された。また、患者と家族は、このような身体的な問題を中心した一つひとつの問題解決のプロセスが長期戦となり、先の見えない不確定な不安のなかで諸々の課題に折り合いをつけながら生きていくことを認識しつつも、心情として拒否している患者が少なからずいた。難病を病むという体験は、時には患者の明確な治療方法の理解を妨げ、介入効果の評価が困難な場合もある。このことを看護ケア担当者と研究者が認識し、患者、家族の心理に十分配慮して研究継続の協力を得ることは重要である。これまで得た知見をもとにさらにケア担当者による看護介入を継続し、ケア担当者とのケース分析を繰り返して、今後、看護介入の方法論を見いだす予定である。
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