2003 Fiscal Year Annual Research Report
行動分析手法を痴呆性高齢者ケアの実践に援用するための研究
Project/Area Number |
15592316
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今川 真治 大阪大学, 人間科学研究科, 助手 (00211756)
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Keywords | 痴呆性高齢者 / グループホーム / 行動観察 / 徘徊行動 / 社会的相互交渉 / 感情表出行動 |
Research Abstract |
島原市にあるグループホーム城下(代表:小関みどり)において、入居している痴呆性高齢者の日常生活行動と他者との社会的相互交渉に関する行動学的データを収集した。 観察対象はグループホームに入居している5名の中等度から重度の痴呆性高齢者であり、すべて女性であった。行動観察にはデジタルビデオカメラを用い、午前7時30分から午後7時30分までの12時間を2時間毎の6つのブロックに分けて終日録画した。本研究に関しては、ビデオ撮影に関する倫理的条件をクリアし、施設および入居者の家族から撮影に関する許諾を得、さらに承諾書を得て研究を行った。 対象者のうち2名はきわめて強い徘徊傾向を持つ痴呆性高齢者であり、今年度はこれら2名の対象者の徘徊行動の特徴を明らかにするとともに、グループホーム内における対象者と他者との社会的な相互交渉を分析し、対象者の感情表出行動を中心とした対人行動の特徴を明らかにすることを目的とした。 1名の対象者は、日常生活時間の50%近くを屋外での歩行活動に費やしていたが、屋外における笑顔や笑いの生起率は、屋内のそれよりも高い傾向にあった。またこの対象者は、屋内外の接点である玄関において、もっとも頻繁に他者との相互交渉を生起させ、笑顔や笑いなどの肯定的感情表出の観察頻度も高く、他者に向けた言語活動(挨拶や語りかけなど)も高い割合で観察された。このことから、この対象者にとって玄関は、本人の好みの場所である屋外へ開放された場所として選好されるばかりでなく、他者との社会的交渉の場としても機能していることが考えられた。また、他の1名の対象者は、もっぱら屋内徘徊のみを示し、その割合は、全観察時間の70%を超えていた。自分から他者に関わりかけることはほとんどない一方で、他の入居者と施設職員からの関わりかけがきわめて多く観察され、他者の関心を強くひいていることが確認された。
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[Publications] 今川真治, 小関みどり: "グループホームにおける痴呆性高齢者の徘徊行動の分析1-玄関出入りの記録から読み取れること"老年社会科学. 25巻2号. 161 (2003)
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[Publications] 今川真治: "グループホームにおける痴呆性高齢者の徘徊行動の分析2"日本心理学会第67回大会発表論文集. 1110 (2003)
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[Publications] 今川真治: "グループホームにおける痴呆性高齢者の行動分析-常同化した外出行動を示すMさんの場合-"日本発達心理学会第15回大会発表論文集. 417 (2004)