2004 Fiscal Year Annual Research Report
行動分析手法を痴呆性高齢者ケアの実践に援用するための研究
Project/Area Number |
15592316
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今川 真治 大阪大学, 人間科学研究科, 助手 (00211756)
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Keywords | グループホーム / 痴呆性高齢者 / 屋内徘徊 / スタッフの関与 / 感情表出行動 |
Research Abstract |
グループホームに入居する一人の痴呆性高齢者を対象とし、ビデオを用いた行動解析の手法を用いて、屋内徘徊の機序や継続性に関与する要因、特に介護スタッフの関与方略との関連を探った。 観察対象者は、77歳の女性の痴呆性高齢者1名(以下Yさん)であり、NMスケールによる痴呆程度評価は重度痴呆、N-ADL得点は15点で、食事と排泄は部分介助であるが、移動はほぼ自立しており、要介護度は4であった。各月2日間をデータ収集にあて、各日午前7時30分から午後7時30までの12時間を2時間ごとの6つのブロックに区分し、各ブロックについて10分間ずつ、対象者をビデオを用いて撮影した。 居間での休息時間中31.3%が屋内徘徊の移動であり、10.8%が徘徊中の立位であったことから、観察時間の約42%が徘徊に費やされており、Yさんの徘徊率はきわめて高いと言えた。当ホームでは、畳敷きの居間に椅子を置いて高齢者が生活しやすいように配慮しているが、Yさんは、椅子に座っている(23.2%)よりも畳の上に正座している(30.9%)ことの方が多く、ホーム入居前の生活の影響(茶道の嗜み)が強く残っているようであった。また、座位継続時間の平均は23.9秒であり、Yさんは短時間しか着座していなかった。Yさんが自主的に着座した場合と、スタッフが強制的に着座させた場合の座位継続時間には差がなかったが、Yさんが立ち上がってから自主的に着座するまでの平均時間(19.7秒)よりも、スタッフによる強制的着座までの時間(9.3秒)は有意に短く(t=-2.15,p<0.05)、スタッフが徘徊を抑止しようとする傾向があると思われた。 Yさんの感情表出行動との関連を見ると、スタッフ(あるいは他の入居者)が、Yさんの正面から、顔を見ながら声をかけたり手を握るなどの関わりを行うことで、Yさんの眉上げなどの挨拶行動や微笑み、発話などが誘発される一方で、横位置や背後からの関わりかけでは、そのような肯定的な表出は起こりにくかった。
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