Research Abstract |
本研究は,健康な高齢者に対する脱水症,熱中症等の暑熱障害予防プログラムを開発することを目的とする.その主な内容は,高齢者の水分出納と飲水行動,活動,休息,食事等の生活行動の特徴を明らかにし、生活の工夫で防げる暑熱障害予防策を検討するものである.研究期間は2年間であるが,2年目の平成16年度は初年度の結果にデータを補完し,それらに基づき暑熱障害予防のための具体的なプログラムを作成し,それを実際に試行した.以下がその結果である. 1.熱中症既往のない高齢者の夏季における暑熱に対する対処方法と飲水行動の調査を実施した結果,飲水量は1日約1リットルを「こまめにお茶や水を摂取」する者が多い.飲水は入浴後,食事中,運動後,起床時が多く,飲むタイミングに工夫を凝らし,意図的な飲水を実践する者が多かった.暑さで外出を控える者は少なく,外出時には帽子や日傘の使用者が多く,クーラー使用者は少ない.熱中症既往のない高齢者は意図的な飲水を心がける等,熱中症予防のための習慣が確立されていた. 2.暑熱障害予防プログラムの作成のための基礎的調査の結果,飲水に限定すると,高齢者自身のライフスタイルの中にいかにして効果的に飲水行動を組み込めるかが予防プログラムの鍵となることが示唆された.そして,効果的な飲水行動の実践のためには,(1)飲水への正しい知識を持つこと,(2)自分の状況から飲水必要量を正確に見積もれること.(3)飲水摂取の時間帯を工夫し,必要な水分量を摂取できること,(4)自ら飲水できない要介護の高齢者にたいしては,介護者が上記を十分考慮し,対応すること等をプログラムのポイントとして,指導する. 3.暑熱障害予防プログラムの試行として,上記1.2をふまえ,健康な高齢者向けの「暑熱障害の予防」について講演を実施すると共に,コメディカルスタッフ向けの雑誌に飲水指導のあり方についてを掲載した.その評価としては,まだ十分な検討はできていない.現在のところ,飲水の必要性とその方法は理解できたという評価が多いが,実際の飲水行動につながっているかは,継続的な観察が必要であり,課題である.
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