2003 Fiscal Year Annual Research Report
非定住者の生活ニーズと保健・医療・福祉の支援のあり方
Project/Area Number |
15592350
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
稲垣 絹代 広島国際大学, 看護学部, 教授 (40309646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鹿嶌 達哉 広島国際大学, 医療福祉学部, 助教授 (00284141)
横藤田 誠 広島国際大学, 医療福祉学部, 教授 (20212300)
八木 正 広島国際大学, 医療福祉学部, 教授 (80022101)
平川 茂 四天王寺国際仏教大学, 人文社会学部, 助教授 (60258069)
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Keywords | ホームレス / 保健 / 労働 / 福祉 / 居住権 / 関係性 / 自立支援 / 当事者 |
Research Abstract |
本年度はホームレスに関する保健・医療・福祉問題と必要な対応策について、1.文献研究、2.中規模都市の行政施策と3.大規模都市における支援活動については現地調査をして検討した。 1.アメリカにおけるホームレスの実態と支援団体(特にNPO)、法学的見地からの「居住権」、労働人権問題の延長としてのホームレス、ホームレスの健康に対する文献研究を行なった。 2.倉敷市と福山市の行政担当者に対する聞き取りから、中規模都市では担当者や適用される制度(特に予算)による制限が強く、充分な対応は取られていなかった。国・県レベルでの方針決定を待っている状況であった。 3.大阪市(A,B,C,D)と北九州市(E)の支援団体では、主として取り組んでいる問題、対応の仕方、当事者との関係に違いがあった。各団体に共通していた活動には、(1)炊き出し、衣類の配布、(2)相談、(3)行政との交渉の支援、(4)野宿生活者間の連携作りがあった。特徴が見られたのは、行政・医療機関に対する監視と要求(A)、野宿者の居住権の確保(B,C,D)、野宿生活における自立(C)、居宅保護による自立(A,D,E)、自立支援のプログラム(E)に関してであった。また、支援者とホームレスとの関係性、支援と自助の比重の置き方にも地域差・団体差が見られた。支援者への聞き取りだけでなく当事者からの聞き取りにも努め、健康相談も行なった。 4.今後の支援活動としては、(1)行政が主導すべき「公共の場」における居住権の確立、医療・福祉施設に対する指導と監督、(2)民間の支援団体が中心に行なう心理的相談とサポート、野宿者同上、および野宿者と地域住民との交流、(3)行政と支援団体が協働して行なう自立生活支援、就労支援などがあげられる。 5.研究課題としては、ホームレスの支援の支柱となる法律的・比較文化的・保健福祉労働的概念の確立、福祉行政サービスと保健・医療機関の問題点とそれを生み出す構造的問題の整理、福祉行政と医療機関の「専門職」育成の方法論などがあげられる。
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