2003 Fiscal Year Annual Research Report
法整備支援を通じた制度改革による国家のガバナンス向上に関する開発法学的研究
Project/Area Number |
15605001
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松尾 弘 慶應義塾大学, 法科大学院, 教授 (50229431)
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Keywords | 開発 / 発展 / 開発法学 / ガバナンス / 良い政府 / 良い統治 / 法整備支援 / グローバリゼーション |
Research Abstract |
1.開発法学におけるガバナンス理論の位置づけ ガバナンス理論は、近代化論的な法的自由主義に立脚した第1期開発法学(1960年代半ば〜1970年代半ば)と、そのアンチテーゼとしての従属論的な計画的介入主義に立脚した第2期開発法学(1970年代半ば〜1980年代半ば)との止揚として、新自由主義思想と新制度派理論に立脚した第3期開発法学(1980年代半ば以降)を特徴づける中心概念であることが検証できる。こうした開発法学史のコンテクストにおけるガバナンス理論の把握は、ガバナンス概念が現在注目されるに至った必然性を裏付け、その重要性を再認識させる。 2.ガバナンス概念の定義 ガバナンス概念は、市場ならびに企業、国家、および国際関係の3つのレベルの区別と相互関連を踏まえたうえで、定義されうる。すなわち、(a)コーポレート・ガバナンスとは、企業経営者の経営能力を向上させ、企業の活動を活性化する一方で、違法または非倫理的な行為を抑制すべく、株主、株主総会、従業員、メイン・バンク、市民社会などが企業活動を監視し、コントロールしうる全般的システム、(b)国家ガバナンスとは、市場および企業がそれらの本来的機能を発揮できるよう、政府が法的ルールの設定および執行を適正かつ確実に行う一方、そうした政府の権限行使の濫用・逸脱を回避すべく、行政部・立法部・司法部および市民社会が、政府の権限行使を監視し、コントロールしうる全般的システム、(c)グローバル・ガバナンスとは、国際関係における個人、企業、NGO、国家、国際機関などの様々な主体の活動を活性化する一方で、それらの違法または非倫理的な行動を抑制すべく、主権国家群が、世界政府をもつことなしに、コントロールしうる全般的システムとして、それぞれ定義することができる。そして、第3期開発法学の実践目標としてのガバナンス概念は、グローバリゼーションが進行する中で、(c)による国際秩序の認識枠組を踏まえつつ、(a)を可能にする不可欠の手段として、(b)の実現に着目するものであることが確認される。こうした3レベルのガバナンスの相互連関的把握により、法整備支援活動の必然性と方向性が明らかになる。 3.ガバナンス指標の設定 法整備支援の目標と方法を明確にするためには、前記2(b)の国家ガバナンスの向上を測定するための具体的指標が必要である。そのためには、世界銀行、国連開発計画などが提示する諸規準も参考にしながら、市場・企業、政府および市民社会の諸組織が担う国家の3つの機能を測るガバナンス指標として、(a)民間部門スコア、(b)公的部門スコア、(c)社会部門スコアからなる3次元モデルを構築することが可能かつ有益である。
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Research Products
(2 results)