2004 Fiscal Year Annual Research Report
住民主導の環境・人災対応ガバナンスの実録的資料作成
Project/Area Number |
15605003
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
長嶋 俊介 鹿児島大学, 多島圏研究センター, 教授 (10164419)
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Keywords | 住民負担 / 一部離島問題 / 汚染者負担の原則 / 廃棄物 / 人日数 / 共治力 / 活動プロセス / エンパワメント・プロセス |
Research Abstract |
産業廃棄物不法投棄事件の、公害等調停委員会調停成立までの25年間とその後の住民側活動を、元資料を基に人日数的に、記録化して、活動内容分析を行った。男女性・年月別・活動節目別の、活動量が明確になった。その活動プロセスを、経路図的に詳細化しつつ、ガバナビリティのインプット(前提・環境・ニーズ),スループット(活動・経営・意思決定),アウトプット(資源変化・成果・新たな課題),フィードバック連関を通じた形成過程を整理した。それら前提に加えて、記録化として、映像資料などの収集を続けた。また、定量的に捕捉困難な、定性的なものの記録化にも取り組んだ。精神的肉体的な負担や、かかる活動の中で形成されてきた人的資源の自己評価・他者観察について、また課題解決プロセスと関与(長期の戦いを支え続けてきた家庭内・地域内人間関係をも含む)、それらの「実録」を、申請人達の高齢化が急速に進展していく中で、証言録的な記録としても残す努力を積み重ねた。 住民側負担の、金銭的データーについても詳細に分析を行った。正確な記録と内部監査も、かかる活動の「歴史的批判に耐えられる戦いの質」を証明する物である。寄付金やカンパは、彼らの戦いへの支援として外部からももたらされたが、無償の案内や、見かえりを求めない彼らの純粋さ、未来世代のための戦いの動機性などへの共感である。3自治会による負担、弁護士達の無償奉仕(その時間量と活動内容、活動場所など、特に休日や直接島内での関与の高さも、住民側記録から詳細に明らかになり、それらを記録として積み上げた)相当額、住民側人日数・負担相当の機会費用、産業活動などのダメージなど、それらの負担量との対比も、具体的に行った。 それら全島民1300人による戦いの重さに対比される社会的コストも整理できた。定量的には、県費と国費の経年的整理である。定性的には、ガバナンスとしての具体的な成果としての、本島である小豆島や、県本土・県民へのグラスルーツ的広がり、村廃止後初の県中央への直接意見表明機会の形成(若手事務局運動家の県会議員としての押し上げ)であり、国・中央での事態の進展であり、法整備等の抜本的整備や国際的評価である。それら各段階での島民ガバナビリティの実情が、準公式記録としてほぼ整理された。 これらの結果、豊島島内の民主的討論や調整に関わる人日数の圧倒的な大きさ、住民会議形成以降の、人的・金銭的負担の桁違いの大きさ・重さ、さらには住民自らが資料づくり、専門家達との共同作業を通じて、自らエンパワメントしていくプロセス、またサポーター群(研究者・学生のみならず、マスコミ関係者達の群)達すらをも、討論・智恵・情報の資源として、協力関係を構築していく吸引力の強さも明らかとなってきた。
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