Research Abstract |
本研究では,放送教育番組及びインターネットのWeb環境において,学習者が個人の進捗度に合わせて学習を進めることを可能とする,教材データベースを含めたマルチメディア教育支援システムを研究している.研究対象分野は数学,特に文系向け経済数学としている.今年度予定していた実施項目とその実施内容は以下の通り. (1)学生が問題を解く過程の分析:実際に研究室で,学生(1年)4名に用意したWEBドリルを解いてもらい,分からない点について質問してもらった.この結果として,数学の決定問題全般に適応可能な質問の仕方について,ノウハウを得た.このノウハウはシステム試作において活かされた. (2)過去のCAI及び機械学習理論の調査:機械学習方法の一つであるExplanation-Based Learning手法に着目し,調査した.既存研究の殆どが新規マクロオペレーションの発見による学習の効率化を目指すものであるが,我々は学習者の中に正しいマクロオペレーションを構築するために,説明に基づくアプローチを採ることにした.知的CAIにおける個人化手法についても調査した. (3)学習者と教師の間の対話による,行詰まり原因分析手法の開発:学習ドリルを教材データベースとして用意しておき,別途,学習者の履歴は学習履歴トランザクションとしてデータベース化する.ドリルに誤答した場合,システムは学習者が分からなかった原因(キーワード)を推定し,そのキーワードを説明する教材を選択表示し,かつ,学習者がその説明を理解したか確認のため,関連するドリルを選択し解かせる,という機能をもつ教育支援システムを試作した.上記行詰まり原因分析手法実現のため,データベース属性を決定し,データベースを設計し実装した. 上記の研究成果を踏まえ,分かったことは,行き詰った学習者を支援する仮想教師を実現するためには,仮想教師の動的な台詞機能も含めた教材の自動生成機能が必要であることであった.又,本研究の目的として,効率的システム構築がある.それはデータベースシステムとしての視点からのシステム柔軟性と,教えるべき対象科目の内容変化に対して,効率的に教材を作成する柔軟性などを含む.よって,仮想教師の動的な対話機能を実現するテストベッドとして,XML及びXSLTなどのセマンティックWeb技術を利用した教材自動生成システムを試作することとした.対象は,経済数学における最適化問題を教示するための教材である.人間の教師は,数学問題を定義するための,必須情報だけを入力することにより,仮想教師の対話機能を含むWeb教材を作成することが可能となる.現在,このシステムで作成したWeb教材の,学習者にとっての学習効果を評価している.
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