2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15607009
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Research Institution | KANAZAWA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
樋渡 保秋 金沢大学, 自然科学研究科, 教授 (20019491)
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Keywords | 分子動力学シミュレーション / 誘電特性 / PPO |
Research Abstract |
分子動力学シミュレーションの使命のひとつとして企業の製品開発現場の問題解決への応用事例の研究がある。本研究はそれを目指したものである。次世代の通信機器の開発目標として数百ギガヘルツ帯からテラヘルツ帯の周波数に使用できる製品開発が注目されている。これが可能になれば通信量の飛躍的な増大をはかることができ携帯電話などの性能が飛躍的に向上する。本研究ではこれらの目的に適う高分子誘電材料の分子デザインを分子動力学シミュレーションの方法により考察したものである。物質の誘電率に関して言えば、分子の分極(電気双局子モーメント)が鍵となる。高分子材料の場合は分子内の分極と分子間分極と区別できるが、中でも前者の分布(構造)は我々の関心のある周波数帯の誘電特性に最重要である。本研究ではこのような分子内分極のみを考慮し、分子間分極は無視して、電気双局子モーメントの自己相関関数のパワースペクトラムから誘電特性を求めた。実際の高分子誘電体では分子内電荷(分極)の分布が単純ではないことが多いが、本研究ではPPO高分子を念頭に分子内双局子モーメントが分子の骨格(結合)方向に沿ったもの(いわゆるAタイプ)を取り上げた。また、分子動力学シミュレーションの計算において計算時間の短縮化のため、荷電を陽に取り入れることなく、見かけの双局子モーメントを定義し、これらのパワースペクトラムを求めることからPPOの動的誘電特性を求めた。複素誘電率、コール・コールプロットなどからPPO高分子内のフェニレン基と酸素を結ぶ結合の偏角振動モードが誘電特性に重要な役割を果たしていることなどの結果を得た。
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