2004 Fiscal Year Annual Research Report
密度汎関数法のフラビン酵素への適用とその反応メカニズムの体系化
Project/Area Number |
15607015
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
玉置 春彦 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助手 (80264290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 丈幸 神戸大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (50332763)
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Keywords | 計算科学 / 分子軌道計算 / 電荷移動相互作用 / フラビン酵素 / アシルCoA脱水素酵素 / 分子振動スペクトル / 赤外吸収スペクトル / 密度汎関数法 |
Research Abstract |
本年度は、アシルCoA脱水素酵素の反応メカニズムを、補酵素フラビン、基質(基質アナログ)および近傍のアミノ酸の電子論に基づいて理解することを主要な目的として研究を継続した。特に、酵素活性部位における基質および基質アナログの水素結合形成とその結合状態を、振動分光により観測する方法論の開発に重点を置いた。酵素-基質(基質アナログ)複合体の振動スペクトルから特定の振動モードを選択的に観測する手法であり、安定同位体ラベル体を利用する赤外差スペクトル測定である。赤外差スペクトル測定は、これまで、測定者の熟練に依存する傾向が強く、一般的手法として広く利用されることは無かった。本研究では、Nicolet Nexus 670 FT-IRを使用し、サンプル調製における改良に加え、アルゴンガスによる光学系からの水蒸気の排除、電源の安定化およびセル厚の補正法の導入を行い、差スペクトルを再現性良く観測することを容易にした。基質(基質アナログ)のカルボニル炭素の13Cラベル体を用いて、カルボニル伸縮振動の選択的観測を成功させた。また、密度汎関数法を用いたモデル計算との比較検証から、酵素複合体における基質活性化(カルボニル基への水素結合形成)によるC=O結合次数の減少を定量化した。分子振動レベルでの研究成果は、本課題において既に行った可視紫外吸収およびNMRスペクトルの実測とそのシミュレーションと共に、2005年4月開催のフラビン国際会議にて発表予定である。ターゲットとなる原子位置を安定同位体13C、15N、18O等で標識することで、目的の振動モードを選択的に観測する本研究手法は、酵素分野に留まらず、分子相互作用解析の一般的手法として、応用展開されることが大いに期待される。
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Research Products
(1 results)