Research Abstract |
本年度は,有機立体化学を記述するためのRS-立体異性体群概念の提案をはじめとして,次のような成果をあげた. (1)ステレオジェニシティとキラリティの相違を議論するために,RS-立体異性体群(RS-stereoisomeric groups)を提案した.この群から出発して,ホランティマー,ステレオイソグラム,RS-ステレオジェニシティを定式化した. (2)藤田の開発した剰余類代数理論(Shinsaku Fujita, Symmetry and Combinatorial Enumeration in Chemistry, Springer-Verlag, Berlin Heidelbelg(1991))を着色グラフを用いて研究し,剰余類表現,マーク,指標,および群減縮をグラフ的にモデル化した. (3)二重着色グラフの概念を提案し,剰余類表現,二重剰余類,単位減縮循環指標をグラフ的に説明した.これは,藤田の剰余類代数理論のグラフ的に定式化したものにあたる. (4)アレン誘導体に関するキラリティ,RS-ステレオジェニシティ,ステレオジェニシティ,同一骨格異性体を理解するために,群論に関する術語(点群,RS置換群,RS立体異性群,立体異性群,同一骨格群)および立体異性に関する術語(エナンチオマー,ホランチマー,RSジアステレオマー,ジアステレオマー,および同一骨格異性体)をあらたに作成した.アレン誘導体の場合は,RS立体異性群と立体異性群とが一致する.このため,従来使われてきたジアステレオマーは,RSジアステレオマーと一致する.RSジアステレオマーの間の異性現象は,同一骨格異性として理解される.アレン誘導体のおける擬不斉についても論じた. 代数的に定式化した剰余類代数理論を,図形(グラフ)的に定式化しなおすことにより,有機化学者にも扱いやすい概念となった.この過程で,検索キーとなりうる術語を多数提案したことは,今後の検索エンジンの仕様の策定に大きな指標となる.
|