2003 Fiscal Year Annual Research Report
対人的コミュニケーションの成立基盤と可塑性に関する認知心理学的研究
Project/Area Number |
15650047
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
神尾 陽子 九州大学, 人間環境学研究院, 助教授 (00252445)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
箱田 裕司 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50117214)
針塚 進 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50113973)
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Keywords | 自閉症 / アスペルガー障害 / コミュニケーション / 自動的処理 / 表情認知 / 自己意識 / 言語連想 / 可塑性 |
Research Abstract |
本研究が今年度、目的とした、実験材料の完成、臨床群実験、米国データの収集、は予定通り修了した。課題が適切であることが明らかになったので、来年度以降引き続き、臨床群の対象を拡大して実験を行う。 平成15年7月までに、大学生、定型発達児を対象に予備実験を行い、実験材料の妥当性を確認した。夏までに医療・相談機関、学校を通して研究協力者を募り、数十名に及ぶ高機能自閉症児、学習障害児、多動児を含む学童期の軽度発達障害児と、十数名の青年の応募を得た。8月から9月にかけて、九州大学において、協力児童と保護者に個別面接を行い、精神医学的および心理学的評価、実験課題を施行した。10月以降は、データ解析、発表、論文作成を行った。 その結果、 (1)他者の表情に対する情動 両群とも青年期までは情動反応は自動化されていなかった。自閉症青年ではネガティブ表情に、定型青年ではポジティブ反応に特異的という結果が得られた。 (2)自他意識 自閉症児にも動作を介した自己意識が働いていることが認められた。しかし自閉症の自己は他者に対して優位でなかった。 (3)言語連想 高い言語知能を持つアスペルガー児童青年では、定型発達児と同様な自動的単語連想反応が生じているおり、会話の困難な原因は単語処理レベルの問題ではないことがわかった。 本研究は、自閉症児のコミュニケーション諸機能の無意識の自動的処理を調べた初めての研究である。自閉症児において、情動、自己意識、言語の単語処理に関して、基本的な自動化メカニズムは、定型発達児とほぼ同様に機能していることが示された。そして定型児で自動化した反応のうち、自閉症児に欠落していた側面は、他者の感情の対人的意味、対人的報酬性が関与する処理であった。このことから、要素的機能の障害というよりもむしろ、他者との関係性において対人学習する時に必要な諸機能の相互連関が機能せず、対人的側面が未発達である可能性が示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 神尾陽子: "対人認知と領域固有性・一般性:自閉症からの検討"基礎心理学研究. 22・1. 6-12 (2003)
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[Publications] 神尾陽子: "高機能自閉症とアスペルガー障害における潜在的な表情処理と情動の発達的変化"第44回日本児童青年精神医学会抄録集. 85-85 (2003)
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[Publications] 神尾陽子: "高機能自閉症とアスペルガー障害にみられる表情顔処理の発達的変化"自閉症スペクトラム研究. (印刷中). (2004)
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[Publications] 山本幸子: "自閉症における自己と他者の処理:自己および他者の動作がエピソード記憶に与える影響についての検討"児童青年精神医学とその近接領域.. (印刷中).
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[Publications] Yamamoto, Y.: "Interaction of self-other monitoring processing and verbal processing in verbally able PDD : The effects of subject-performed tasks and experimenter-performed tasks"Journal of the International Neuropsychological Society. 9. 270 (2003)
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[Publications] Kamio, Y.: "Atypical language in high-functioning autism : An analysis of Wechsler IQ profile."Japanese Journal of Child and Adolescent Psychiatry. (印刷中). (2004)