2004 Fiscal Year Annual Research Report
対人的コミュニケーションの成立基盤と可塑性に関する認知心理学的研究
Project/Area Number |
15650047
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
神尾 陽子 九州大学, 人間環境学研究院, 助教授 (00252445)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
針塚 進 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 教授 (50113973)
箱田 裕司 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 教授 (50117214)
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Keywords | 対人的コミュニケーション / 自閉症 / アスペルガー障害 / 表情認知 / 自己意識 / 言語連想 / 自動的処理 / 代償的発達 |
Research Abstract |
本研究は、対人的コミュニケーションは何を基盤として成立するのか、自閉症のようにその成立基盤に欠陥がある場合、対人的コミュニケーションに必要な認知機能の諸側面はどのように発達していくのか、代償的発達の結果はどうなるのか、を明らかにすることを目的とするものである。 今年度は、昨年度に引き続き、3課題((1)(2)(3))については、さらにサンプル数を増やし、昨年度の知見を更新し新たな分析も追加した。さらに今年度、あらたに、より自然に近い構造化された場面での談話データの分析により対人的場面も追加した。さらに今年度、あらたに、より自然に近い構造化された場面での談話データの分析により対人的場面での言語特徴を解明する手がかりを得た((4))。これらの論文は投稿中あるいは準備中である。 今年度、あらたに明らかとなった結果の要約は、 (1)他社の表情に対する自動的情動反応:通常他者の表情を知覚すると、意識せずとも自動的に情動反応が生じるのに対し、自閉症では無意識的には特別な反応が生じないことが明らかになった。また意識せずに生じる情動反応は、青年期になって認められたが、ネガティブな他社の表情に対してのみ敏感な反応をするという独特な発達プロセスが示唆された。 (2)自らの動作と他者動作観察の記憶に及ぼす効果の比較検討:定型発達と知的障害の児童では自己の動作が優先的効果を持つのに対して、自閉症児では視覚情報の効果の方が大きかったことから、自閉症では自己意識の希薄な様式で独特な外界体験をしており、その記憶形成のプロセスは感覚的要素が強いことが示唆された。 (3)単語連想及び(4)談話分析:形式的な言語発達に遅れのない高機能自閉症では、単語の意味処理および談話形式において成績低下はみられないが、複数のモダリティ(単語の音韻要素や他者の非言語的手がかり)の言語関連情報を統合するプロセスにおいて、定型発達と異なる言語反応パターンを生じることがわかった。 これらにより、自己および他者に向かう優先的注意の上に、知覚、情動、言語、記憶の諸能力が発達することで、それらの種々の情報は有機的に結合され、意味のある外的世界の体験、そしてそれに対峙する自己概念を形成していくという通常の発達プロセスが、自閉症においては障害されていることが明らかになった。従来の認知検査のように特定の機能のみを測定すると、代償的発達と定型発達を区別できず、自閉症にみられる深刻な有機的な機能結合不全が見逃されてしまう。来年度は、自閉症に特徴的で、かつ定型発達に重要な対人機能を支える有機的な機能結合の特徴を測定できる検査バッテリーの開発を目指す予定である。
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Research Products
(6 results)