2004 Fiscal Year Annual Research Report
「わかっているができない」現象の情報処理過程の解明
Project/Area Number |
15650126
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 裕二 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (30191456)
|
Keywords | 理解 / 行為 / 走り幅跳び / 助走 / パス |
Research Abstract |
本年度は,「わかっていてもできない」課題として,実際のスポーツ技能である走り幅跳びの踏み切り調整とサッカーの選択的パス動作について観察検討した. 走り幅跳びの踏み切り動作では,踏み切り線を踏み越えずに最大距離の跳躍が要求される.そうした明示的規則にもかかわらず,ファールと呼ばれる踏切線の踏み越しが見られる.この走り幅跳びの助走動作における歩幅調整に注目し,そのダイナミクスを検討した.つまり,踏み切り直前までの歩幅調整の様相とその際の身体協応から,どのような情報処理が行われているのかを推察した.その結果,固定的な助走動作ではなく,個人差はあるものの,踏み切り数歩前から腰の回転を小さくし,下肢の調整可能性を高める方略が採用されていることが明らかになった.つまり,事前に決められた固定的な運動プログラムのフィードフォワード制御ではなく,体幹部の固定による遠位の自由度を高め,環境との相互作用の中で調整を継続するという情報処理過程であると考えられる.さらに,こうした調整過程と比較的固定的な過程が連続的に切り替わっていることから,こうした制御方略の滑らかな切替が「できる」ためには重要であると考えられる.このことは,運動技能における「わかっていてもできない」現象では,概念的あるいは意識的に「わかる」必要がなく,逆に意識的にわかろうとすることが妨害的に働くことも考えられた. サッカーのパス動作では,ボールをける方向を指示するタイミングを実験的に操作し,「わかる」タイミングとそれが「できる」タイミングについて検討を加えた.これは,ボールが転がってくる途中でパスすべき方向をLEDで呈示し,その動作を分析した.まだ予備段階で,いつパスすべき方向を呈示すると,「わかっていてもできない」状況を操作できるかを検討中である.
|