2005 Fiscal Year Annual Research Report
広帯域誘電分光による食品中の過冷却水の観測手法の確立と応用
Project/Area Number |
15650156
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
八木原 晋 東海大学, 理学部, 教授 (40191093)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新屋敷 直木 東海大学, 理学部, 助教授 (00266363)
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Keywords | 食品 / 広帯域誘電分光 / フラクタル構造 / 高分子分散系 / 高分子水溶液 / 凍結 / ガラス化 / 不凍水 |
Research Abstract |
本研究では低含水量の穀物など,固い表面を有する食品の高周波誘電分光を行うため,測定試料・電極周りの設計・製作を新たに行った。特に穀物の粒状試料を固定化するためのシリコンゴム製サンプルホルダーやその粉体試料測定のための同軸円筒型電極をセットアップした。 低含水量食品である穀物を意識し,まずPoly(vinylpyrrolidone)[PVP]水溶液の高濃度域(含水量8wt%以下)での広帯域誘電分光(BDS)測定を行い,得られた緩和曲線に各緩和過程の緩和関数をモデリングしたフィッティング解析を適用して緩和パラメータを決定したところ,50℃では10Hzから1mHzにかけて二つ以上の緩和が観測された。このような低含水量試料の測定は従来ほとんど行われていない。poly(vinyl acetate)のbenzene溶液の場合,誘電分光で得られた分子鎖運動は示差走査型熱量(DSC)測定で観測されるガラス転移に対応していることから,これを利用して上述の緩和過程の同定が可能であろう。 次に食品として米や肉類のBDS測定によって,食品中の水構造を調べた。米粒は13%ほどの含水量で小さく固いために,表面を削って前述のホルダーにセットした後に同軸平面型の電極を接触させて測定し,十分な再現性を得た。さらに米粉や炊飯米の誘電分光を併せて行うことで,広い含水量範囲での水構造を観測し,得られた緩和時間と緩和時間分布のダイアグラムによるオリジナルなフラクタル解析を行ったところ,米の水構造が各種水溶液系よりも水分散系の水構造に近いことを示した。炊飯米の水構造が変性の特徴を示すかどうか,今後の詳細な精密測定の結果が期待される。 これらの研究成果を,2005年度に開催された水観測の国際会議(ISEMA2005)やスローダイナミクスの国際会議などで発表し,さらに米物理学協会,米化学会などの学術誌に発表した。
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