Research Abstract |
放射線によるゲノム障害の修復機構には,機能的蛋白質複合体が大きく関与している。その中でヒストンH2AXは,重要な役割をなすと推定されているが,それを解析するには,H2AXの機能的蛋白質複合体の網羅的解析が必要である。本研究では,ハーバード大学中谷が開発した機能的蛋白質複合体の精製法を応用し,tagを付与した,H2AX蛋白質複合体をトランスジェニックマウスと培養細胞を用いて,生理的条件下でのH2AX機能的蛋白質複合体の精製法を開発し,その網羅的MS/MS解析を行う。 1)マウスH2AXのクローニングと発現 RT-PCRによりクローニングしたマウスH2AXを発現vectorに導入し,その際,N末端およびC末端にFlagおよびHAのepitope tagを付与した。次にH2AXの発現vectorを293培養細胞に遺伝子導入し,western blotting法により実際にH2AXがタンパクとして発現していることを確認した。 2)H2AX複合体の精製と機能解析 HeLa培養細胞にクローニングしたマウスH2AXをレトロウイルスを用いて導入し,安定形質株を樹立した。この細胞株より核分画を調整し,核抽出分画およびクロマチン分画においてH2AX複合体を精製した。H2AXを標識することにより2重鎖切断後のH2AX複合体の動態を解析した。その結果,H2AX複合体はゲノム損傷剖立で高度に動的な状態にあることが判明した。このH2AXの動態は,損傷後のリン酸化とは関係なくモノユビキチン化に依存しており,このユビキチン化は,TIP60ヒストン・アセチラーゼによるアセチル化により制御されていた。このH2AX複合体の動態は,ゲノム損傷後の細胞応答での初期過程に重要であり,損傷部位での修復蛋白質等のリクルートやその安定化に重要な役割をなすと推定された。
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