2003 Fiscal Year Annual Research Report
ドメスティック・バイオレンスが子どもの性別役割形成に与える影響に関する実態調査
Project/Area Number |
15651106
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
沼崎 一郎 東北大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (40237798)
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Keywords | ドメスティック・バイオレンス / ジェンダー / 性別役割 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ドメスティック・バイオレンスが、それを直接・間接体験した子どもたちにどのような影響を与えるか、特に子どもたちの性役割意識に対してどのような影響を与えるかを、その実態を明らかにすることである。今年度は、ドメスティック・バイオレンス被害者の支援活動をしている女性活動家、ドメスティック・バイオレンス被害者の自助グループ参加者などからの聞き取りを行うとともに、関連文献の収集と分析を開始した。 欧米の研究を見る限り、ドメスティク・バイオレンスを直接・間接に体験した子どもたちは、いずれも深刻な身体的・精神的影響を受けており、発達上多くの問題に直面していることが明らかとなった。この点については、私が行った聞き取り調査の結果からも明らかである。子どもたちは、様々な心身の不調を訴え、精神的に不安定な状態にある。そのため、保育園や学校でも、クラスメートと普通に接することができない。暴力的な行動を示す子どもも少なくない。親に対する態度も、過度の気遣いを示すなど、通常の子どもとは異なる様相が見られる。 性役割の学習については、まだ十分な知見が得られていない。海外の研究には、ドメスティック・バイオレンスの下に育った子どもたちは、性役割意識に混乱が見られるという報告もあるが、日本では研究がないため、状況は不明である。私の聞き取り調査からも、なんらかの傾向性を見出すには至っていない。しかしながら、内閣府男女共同参画局の行ったアンケート調査を見ると、親の暴力を体験した男性は、そうでない男性に比べて、「男は仕事、女は家庭」という価値観を肯定する傾向が若干強いのに対して、女性では逆の傾向がある。この点から、ドメスティック・バイオレンスが子どもの性役割意識に与える影響には男女差がある可能性が考えられる。次年度は、この点を掘り下げる調査を行いたい。
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