2004 Fiscal Year Annual Research Report
ドメスティック・バイオレンスが子どもの性別役割形成に与える影響に関する実態調査
Project/Area Number |
15651106
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
沼崎 一郎 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40237798)
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Keywords | ドメスティック・バイオレンス / ジェンダー / 性別役割 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ドメスティック・バイオレンスが、それを直接・間接体験した子どもたちにどのような影響を与えるか、特に子どもたちの性別役割意識に対してどのような影響を与えるのか、その実態を明らかにすることである。今年度は、昨年度に引き続き、ドメスティック・バイオレンス被害者の支援活動をしている女性活動家、ドメスティック・バイオレンス被害者の自助グループ参加者などからの聞き取りを行うとともに、関連文献の収集と分析を行った。また、今年度は、日本国内で児童虐待問題に取り組む人々から聞き取りを行うとともに、アメリカ合衆国マサチューセッツ州において、ドメスティック・バイオレンス加害者の再教育プログラムを実施しているNPO関係者、活動家、研究者を訪問し、聞き取りを行った。 これらの結果から明らかになったことは、ドメスティック・バイオレンスが子どもに与える影響は、思春期段階から男女差が顕著になるという点である。特に、男児は暴力的な男性性を体験することによって、加害者役割を学習する傾向が見られるのに対して、女児は同様の体験から、逆に被害者役割を学習する傾向が見られるようである。これが、ドメスティック・バイオレンスの再生産、いわゆる暴力の世代間連鎖の重要な要素となっている可能性が出てきた。また、女児の場合、ドメスティック・バイオレンスを直接・間接に体験する結果、自尊心の低下が著しい場合も少なくないようである。 理論的な面では、日本におけるドメスティック・バイオレンスをめぐる言説に関する人類学的分析を開始し、その成果の一部をアメリカの東アジア人類学会で発表した。
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