2003 Fiscal Year Annual Research Report
ハンセン病問題についての「物語的正義」に関する生命倫理学的研究
Project/Area Number |
15652001
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
宮坂 道夫 新潟大学, 医学部, 助教授 (30282619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤野 豊 富山国際大学, 人文社会学部, 助教授 (70308568)
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Keywords | ハンセン病 / 医療倫理 / 生命倫理 / 隔離政策 / 断種 / 懲戒検束 |
Research Abstract |
I 資料調査により、以下の点を明らかにした。 (1)奄美和光園の入園者の聞き取りにおいて、戦後の米軍による患者隔離の実態が明らかになった。 (2)沖縄県公文書館の調査により、琉球政府の公文書類から1960年代においても沖縄では警察官を動員した隔離政策がおこなわれていた事実が明らかになった。 (3)菊池恵楓園の所蔵資料の調査により、1953年段階で、園長の間でも隔離政策に疑問が存在したことが明かになった。 II 倫理的分析として、(a)隔離政策の採択と継続、(b)断種政策、(c)致死的な懲戒検束の三点に論点を整理して、従来の医療倫理の原則論の観点から分析を試みた。概略は以下の通りである。 (1)20世紀の医療倫理史の、患者の権利確立に至る「二つの波」を以下のように捉えた。 第一波(人体実験の被験者の権利確立):「社会ダーウィニズム、優生学→ナチスドイツの軍医による非人道的な人体実験→ニュルンベルク綱領→ヘルシンキ宣言」 第二波(患者の権利確立):「公民権運動、消費者運動の拡大と医療への波及→同意なき医療処置、人体実験等への告発、死や生殖をめぐるプライバシー権の拡大→米国病院協会・患者の権利章典(1973年)→患者の権利に関するリスボン宣言」 (2)ハンセン病政策の歴史的な分析ならびに生命倫理学的分析の軸として、この「二つの波」のなかに日本の医療倫理史を位置づけることを試みた。その結果、国際社会での患者の権利確立が日本に十分な波及効果をもたらさず、また自国の事例や患者の権利運動との乖離が大きいことがより明確になった。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 宮坂道夫: "ハンセン病問題の歴史と現在"診療研究. 394. 14-21 (2004)
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[Publications] ハンセン病訴訟勝訴一周年記念シンポジウム実行委員会(編): "お帰りなさい! ハンセン病・北陸からの訴え"桂書房. 173 (2003)
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[Publications] 藤野豊(編): "近現代日本ハンセン病問題資料集成-戦後編- 第1巻"不二出版. 349 (2003)
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[Publications] 藤野豊(編): "近現代日本ハンセン病問題資料集成-戦後編- 第2巻"不二出版. 380 (2003)
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[Publications] 藤野豊(編): "近現代日本ハンセン病問題資料集成-戦後編- 第3巻"不二出版. 422 (2003)
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[Publications] 藤野豊(編): "近現代日本ハンセン病問題資料集成-戦後編- 第4巻"不二出版. 375 (2003)
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[Publications] 藤野豊(編): "近現代日本ハンセン病問題資料集成-戦後編- 第6巻"不二出版. 390 (2003)
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[Publications] 藤野豊(編): "近現代日本ハンセン病問題資料集成-戦後編- 第5巻"不二出版. 321 (2003)