2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本留学試験における記述問題の実施方法と分析観点に関する実証的研究 ―記述問題の問題形式・量及び評価基準の適正さについて―
Project/Area Number |
15652032
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村上 京子 名古屋大学, 留学生センター, 教授 (00210005)
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Keywords | 日本留学試験 / 記述問題 / 妥当性 / 信頼性 / 試験の波及効果 / 評価基準 / 論理的な文章 / 学部留学生 |
Research Abstract |
私費留学生の選抜試験として平成14年度から新たに導入された日本留学試験のうち「記述問題」に焦点を当て、その妥当性・信頼性に関する実証的研究を行なった。 まず、学部留学生が入学後の大学生活の中で必要とする記述能力の実態を調べるために、名古屋大学学部留学生を対象に質問紙及び面接による追跡調査を行った。その結果、入学後半年間に2000字程度のレポートを平均7本書いており、このレポートのほか、学期末の試験で短時間に答案をまとめることに困難を感じている学習者が多いことがわかった。この実態調査は引き続き実施し、記述問題の予測的妥当性を検討していく。特に論理的な文章を書く基礎能力として、選抜試験として何を測定していくべきか、他外国語の資料も参考にして、関係者と議論を進めている。 名古屋大学を受験した留学生の記述問題の分析結果から、国際教育協会による採点結果が天井効果を示し、約6割が6点満点をとり、また日本語他科目との相関も低いことから、評価基準の見直しの必要性が明らかになった。4名の日本語教育関係者の協議により、記述問題の評価基準を新たに作成した。予備採点を行い新基準の妥当性・信頼性を検討した後、2003年の当大学受験者の答案を採点し直した。 その結果、2つの課題間の得点間に平均・標準偏差等の差はなかった。日本人大学生に同問題を実施した結果や、同じ学習者に異なる課題を実施した結果の比較から、よりレベルの高い記述能力の測定可能性を現在検討してしている。また民間の日本語学校で予備教育を受けている学習者の作文の分析から、書く能力の測定指標として適切な要因を探る作業も継続して行っていく予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 村上京子: "学部留学生の大学生活における日本語運用上の困難と課題"名古屋大学留学生センター紀要. 創刊号. 5-15 (2003)
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[Publications] 村上京子: "大学教育と日本留学試験(1) -学部留学生の大学生活における日本語運用上の困難-"日本留学試験とアカデミック・ジャパニーズ. 47-62 (2003)
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[Publications] 三谷閑子, 村上京子, 小室輝代: "作文の評価手順が評価に及ぼす影響について"言葉と文化. 5. 1-16 (2004)
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[Publications] 小室輝代, 三谷閑子, 村上京子: "日本留学試験「記述問題」の評価基準の提案とその信頼性"言葉と文化. 2. 55-70 (2004)
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[Publications] 村上京子, 小室輝代, 三谷閑子: "日本留学試験「記述問題」における採点基準の見直し"名古屋大学日本語・日本文化論集. 11(校正中). (2004)