2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15652049
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
韓 敏 国立民族学博物館, 博物館民族学研究部, 助教授 (10278038)
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Keywords | 毛沢東カルト / 毛沢東廟 / 毛沢東彫刻 / ノスタルジア / 記憶 / 毛沢東観光 / 中国 / チベット族 |
Research Abstract |
15年度の一年間、主に資料収集と現地調査を通じて、中国における毛沢東カルトの実態及びそのメカニズムを調べた。具体的に地域格差や産業構造のバリエーション、民族の違いなどの要素を考慮して、五つの調査地を選び、2003年12月5日から29日までに調査を行った。 まず、毛沢東彫刻で有名な町、瀋陽では毛沢東生誕110周年の今年に、政府は投資して文革時代にできた毛沢東彫刻を塗りなおし、都市文化のシンボル、歴史のモニュメントとして位置づけている。彫刻を創作した専門家や彫刻見学者へのインタビューを通して、彫刻創作の過程、毛沢東死後の彫刻の撤廃をめぐる議論、現代における文革彫刻の意味について聞き取り調査を行った。国営重工業の街である瀋陽では、社会主義市場経済への移動の中、多くの国営企業の労働者がリストラされている。これは毛沢東及び計画経済の時代へのノスタルジアにつながる原因の一つである。一方、他の都市にある毛沢東彫刻とは違って、(1)瀋陽の毛沢東彫像は毛沢東彫像と1921年から1969年までの歴史を現す30人の群像によって構成され、(2)2年半にわたって、当時の一流の彫刻専門家によって作られたため、今でも歴史教育の場、芸術の傑作として民間及び彫刻界で高く評価されている。 また、北京の毛沢東の遺体の安置してある記念堂で、48人の見学者にインタビューを行い、彼らの年齢、職業、出身地、歴史の記憶、毛沢東廟に訪れる目的と感想について聞いた。 1935-1948年まで革命根拠地であった陝西省楡林市と農村地域では、1993-1995年の間、三つの廟--毛沢東・周恩来・朱徳を祭る「毛沢東廟」が立てられた。廟の会長や廟関係者、政府の宗教局の幹部と地元の民俗学者にインタビューし、聞き取り調査を行った。 つづいて、四川省の丹巴県チベット族が集中する村で、彼らの歴史の中の毛沢東及び彼らの居住空間における毛沢東像の意味について聞き取り調査を行った。 2003年12月26日は毛沢東生誕110周年の記念日であるので毛沢東の生誕の地である湖南省韶山では大規模な記念イベントが企画された。そこで村人、村民委員会、観光エージェンシー、観光客、政府の幹部、合わせて100名以上の人々にインタビューした。 こうして、異なる地域、都市部と農村部、漢族地域と少数民族地域での調査を行うことによって、毛沢東現カルトの実態、毛沢東の意味の多様化をより明らかに把握することができた。
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