2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15653004
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松村 良之 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80091502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 裕子 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助手 (10360885)
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Keywords | 応報 / 抑止 / 矯正 / 不能化 / 公正の心理学 / 懲罰動機 / 感情の社会学 / デュルケーム |
Research Abstract |
今年度は第1に、社会学、社会心理学の古典によりつつ、刑罰を科すという行為の心理学的性質について学説史的な理解を試みた。第2に、ホーガンとエムラーに始まる応報的公正の心理学によりつつ、主として応報動機とはなにか、それはいかなる公正動機なのかという点について検討を加えた。そこでは、応報動機は規則違反があった特に違反者に懲罰を加えようという動機づけであり、被害者個人の反応ではなく、社会の成員一般の反応であること、そして、それは、古典社会学(デュルケームの社会分業論など)や古典社会心理学(ミードなど)の立場と一致していることが明らかにされた。第3に、社会の成員全体の反応であるならば、社会の成員の集合性が問題となるが、感情の社会学の知見によりつつ、感情の集合性、社会性について検討した。ただし、いくつかの感情の社会学がよってたつ社会構築主義の立場はとるべきではないという結論に至った。第4に、以上の理論的検討を前提として、実験計画法に基づくシナリオ実験を、中央調査社が行う他の社会調査の機会を利用して、成人のランダムサンプルを対象に行った。そこでは操作される変数は被害の性質(物損か人損か)、行為の悪質さ、犯罪が共同体の内部か外部かである。測定される変数は、ウイドマーの刑罰の心理学についての理論的研究を参考にしつつ、刑罰の目的における抑止の程度、矯正の程度、応報の程度、応報の内容(被害者の尊厳の回復、理論的にはガーフィンケルが提示した加害者の名誉の失墜、社会における道徳的価値の凝集)などである。さらに、このような人々の態度と関係があると想定される性格特性が、公正世界仮説尺度、ローゼンバーグに始まる自尊心尺度、素朴道徳観尺度などで測定されている。
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Research Products
(1 results)