2003 Fiscal Year Annual Research Report
言語指標を用いた社会的推論過程の解明-帰納・演繹過程の国際比較研究
Project/Area Number |
15653044
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
唐沢 穣 神戸大学, 文学部, 助教授 (90261031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 真一郎 愛知学院大学, 心身科学部, 教授 (80191956)
西光 義弘 神戸大学, 文学部, 教授 (10031361)
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Keywords | 人物特性の推論 / 言語カテゴリー・モデル / 日本語の属性表現 / アイロニー / 類別詞 / 比較言語学 / カテゴリー表象 |
Research Abstract |
他者に関する行動の記述からその人の性格特性などを推論する過程を調べるため、言語指標を用いた実験を日本とイタリアで実施した。刺激人物の行為を示す動詞表現と、性格特性などの傾性(disposition)を示す形容詞とで記述された人物描写について、イタリア人は動詞で与えられた情報を誤って形容詞で再生する「帰納的推論」の傾向が強いのに対し、日本人では逆に、形容詞表現を動詞で誤再生する「演繹的推論」が、より多く見られた。再認課題を用いた別の実験の結果も同様であった。さらに、動詞・形容詞について知覚される、情報価その他について質問紙評定による調査を行った。その結果、形容詞が人物の特性についてより多くの情報を与えると知覚されるのは日本・イタリアとも同様であるが、日本人は、動詞表現から将来の具体的行動を予測したり状況を思い浮かべたりするアナロジー的推論がこより容易にできることを示した。 これらの実験とは別に、人物表象についての言語指標である、「言語カテゴリー・モデル」の日本語版の開発を試みた。その結果、形容動詞や「名詞+だ」形式の表現、「属性を表す名詞+がある」などの動詞形による属性表現、「ている」の用法など、日本語に特有の表現について新たなコーディング基準を開発した。 また、アイロニーや誇張表現の心理的基礎過程を明らかにするための実験を行い、他者の知覚や意図に関する推論が、言語面にどのように反映するのかを検討した。 さらに、推論過程の基礎となるカテゴリー表象と言語との関連を吟味するための手がかりとして、類別詞に関する言語比較研究を行った。日本語の類別詞を中心とし、類別詞を持たない英語、類別詞を持つタイ語、ビルマ語、中国語、ネワール語などについて比較検討を行ったうえ、これらの議論を含めたモノグラフの編集を行った。
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