2003 Fiscal Year Annual Research Report
ハンセン病患者・元患者の生涯と心理的特性に関する研究
Project/Area Number |
15653045
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊池 武剋 東北大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (90004085)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 亮 東北大学, 大学院・教育学研究科, 助手 (20337207)
福島 朋子 県立新潟女子短期大学, 講師 (10285687)
沼山 博 仙台白百合女子大学, 人間学部, 助教授 (00285678)
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Keywords | 生涯発達心理学 / ハンセン病施設入園者 / 社会的隔離 / 人生展望 / 自己認識 / 社会認識 / ライフイベント / 語り聞き |
Research Abstract |
本研究は、ハンセン病療養施設入所者の語り聞きを通して、彼らが現在持つ人生展望や自己認識、社会認識を捉え、さらに彼らが生きた生涯・境遇との関連を捉えようとするのである。 今年度は本格的な調査研究に先立ち、ハンセン病元患者による自伝を分析し、調査内容や項目の決定の基礎資料を作成した。また、ハンセン病療養所R園を訪問し、入園者との交流を行い、語り聞きのためのラポール形成に努めた。一部を対象に本格的な語り聞きに入っている。 現段階で把捉および推測された事柄は次の通りである。(1)社会的隔離の構造:施設への収容は事実上強制であった。また、入園後は外出が禁止され、さらに自給自足体制が取られていたこともあって、施設外の世界とのかかわりはかなり少なかったようである。現在の入園者の平均年齢は70歳代後半であり、多くは終戦前後に入園、その後昭和20年代までが最もこうした隔離の厳しい時期であった。その後医学的に治癒が可能になり、さらに現在に至る過程で、外出禁止が緩和されたり、差別撤廃を目指す社会的な啓発活動が行なわれたりし、入園者の中にも社会復帰を目指した者もいた。しかし、生まれ故郷には帰れず、また施設外に出るにしても病気を隠さざるを得ない状況が続いており、法律が廃止されたからといって即社会的隔離がなくなったとはいえない。(2)家族の意味:(1)のような事情から入園後家族と再会していない入園者も多い。しかし、だからといって家族は恨みの対象ではない。差別や迫害から家族を守るためにそうしているようである。また、幼少期の母親とのかかわりが今に至っても人生の支えとなっている場合が多いようである。(3)結婚の意味:一般的な結婚の意味合いとは異なり、入園者の場合はまず、当時いつ来るかもしれぬ死を伴侶に看取ってもらいたいという意味づけがあったようてある。また、結婚にあたっては断種が強制され、子どもをあきらめることが結婚の条件とされた。さらに、彼らの結婚は社会への新たなる旅立ちのための基盤作りというよりは、隔離された施設への定着を意味していたようである。
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Research Products
(1 results)