2004 Fiscal Year Annual Research Report
〈公共性〉を育む高校教育改革の実践と構造に関する臨床的研究
Project/Area Number |
15653071
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
菊地 栄治 国立教育政策研究所, 高等教育研究部, 総括研究官 (10211872)
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Keywords | 高校教育改革 / 公共性 / 困難校 / 教師のキャリア構造 |
Research Abstract |
本研究では、高校教育の歴史的な展開をふまえ、現代的な分析軸として<公共性>を中心に据えて理論的・実証的な検討を加えた。前年度末の平成16年3月に2種類の郵送自記式質問紙調査を実施した。ひとつは、全国の公立・私立高校(全日制課程)848校(5分の1抽出)を対象とする「組織調査」(回答者は校長)である。もうひとつは、全国の公立高校200校(20分の1抽出:一部有意抽出)の校長・教員を対象とする「組織・教員調査」である。 これら2つの調査等から、主として以下の事実が浮かび上がってきた。 (1)わが国の高校教育は、戦前の伝統に引きずられ、なおかつ大衆化の流れを受けて比較的早い時期から階層的な構造を形成してきた。最近になって、かつて私立高校が重要なマーケットとしていた都市部進学校にも公立高校が「触手」を伸ばしてきている。他方では、学校週五日制の導入にともなって、公立高校と私立高校の二重構造はますます強化されている。 (2)入学時の生徒の「学力」は、授業料減免率や滞納率ときわめて高い負の相関を示しており、5段階に区分した「第V層」の家庭の経済的な困難さは際立って深刻化している。しかも、これらの相関は、フリーター率の高低や中途退学者率など進路状況やドロップアウトの現実ときわめて深く結びついている。 (3)「総合的な学習」などの学びによって、一定の成果はあがっている。しかしながら、高校教育は依然として<公共性>という視点でとらえ返されておらず、しかも教員のキャリア構造がこの格差を助長している。教育改革が中央や高い地点から語られることの弊害はきわめて大きく、「困難さ」と向き合う高校を支援するまなざし・仕組みも整えられていない。
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