2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15654032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 好孝 東京大学, 宇宙線研究所, 助教授 (50272521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 真 東京大学, 宇宙線研究所, 助手 (10272519)
大林 由尚 東京大学, 宇宙線研究所, 助手 (50345055)
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Keywords | ニュートリノ / 原子核 / 水チェレンコフ検出器 / ニュートリノ振動 / K2K長基線ニュートリノ実験 / スーパーカミオカンデ / ホール状態 / 陽子崩壊 |
Research Abstract |
本年度では、KEK-神岡長基線ニュートリノ振動実験(K2K実験)で前置検出器として用いられている1000トン水チェレンコフ検出器(1kt検出器)でのニュートリノ反応について、ホール状態原子核のγ崩壊事象の証拠となる低エネルギーγ線放出事象の研究を行った。まず10MeVエネルギー領域での1kt検出器のエネルギー決定精度、位置決定精度を更正するために、Ni(n、γ)反応を利用した更正作業を行った。その結果、エネルギースケール、分解能、位置決定性能は、モンテカルロの予想通りの性能を示していることがわかった。この結果を踏まえて、KEK12GeV陽子シンクロトロンで生成されたミューニュートリノビームの1kt検出器でのニュートリノ反応サンプル、100ヒット以下(22MeV以下の放出エネルギーに相当)のイベントを選択し、ニュートリノ反応およびバックグランド事象の詳しい検討を行った。これらの低エネルギー反応とニュートリノビーム射出時間との時間差を早ると、1.1マイクロ秒間に125ナノ秒間隔で並ぶ9個のニュートリノビームバンチ構造と非常によい相関がみられ、ニュートリノ起源以外のバックグランド反応が少ないことがわかった。またニュートリノ反応点の位置分布を見ると、タンク上半分少し偏りが見られる以外ほぼ平坦でバックグランドが少ないことがわかった。この偏りはニュートリノビーム生成時間から遅れるほど顕著になるので、ニュートリノビーム生成時に放出された遅い中性子バックグランドが上空から飛び込んできているものと考えられる。ビームと同期した中性子バックグランド数、ビームと非同期なバックグランド成分も見積もった。その結果全バックグランド数は全体の9.1%と非常に少ないことがわかった。以上の結果を総合すると、2003年のデータについて水標的127トン中で得られた低エネルギーγ線放出候補事象数は18508±192イベントとなった。一方MCでの期待値は17023イベントで、エネルギー分布もモンテカルロとかなりよい一致を示している。このうち中性カレント弾性散乱はおよそ6割と見積もられた。
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