2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15654032
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 好孝 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (50272521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大林 由尚 東京大学, 宇宙線研究所, 助手 (50345055)
三浦 真 東京大学, 宇宙線研究所, 助手 (10272519)
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Keywords | ニュートリノ / 原子核 / 水チェレンコフ検出器 / ニュートリノ振動 / K2K長基線ニュートリノ実験 / スーパーカミオカンデ / ホール状態 / 陽子崩壊 |
Research Abstract |
本年度は前年度に引き続き、KEK-神岡長基線ニュートリノ振動実験(K2K実験)での前置検出器である1000トン水チェレンコフ検出器(1kt検出器)を用いて、ニュートリノ反応による酸素原子核のホール状態検出の基礎研究を行った。 前年度で我々はホール状態原子核からの核ガンマ線検出に成功したが、この状態は酸素原子核での中性カレント弾性散乱νp→νpが起こり、終状態の反跳陽子の運動量がチェレンコフ閾値(約1.1GeV/c)以下であったため核γ線のみがチェレンコフ光を発した場合と考えられる。今年度は同様な中性カレント弾性散乱のうち、反跳陽子がチェレンコフ閾値以上であるサンプルを、そのチェレンコフリングを同定することによって検出する手法の開発を行った。陽子はμ粒子や電子に比べ質量が重いため、1GeV領域の運動量では42度より大幅に小さいチェレンコフ角度のリングを形成する。この特徴を利用して、陽子チェレンコフリングをμ粒子や電子チェレンコフリングから弁別するアルゴリズムの開発が、三浦とニューヨーク州立大の大学院生等を中心により行われた。 シミュレーションによれば、従来の1リングμ粒子事象の約0.5%はこのような中性カレント陽子リング事象であることがわかった。今回開発された陽子リング同定アルゴリズムと他の選択条件を組み合わせることにより、中性カレント陽子リング事象の検出効率を約5分の1に保ったまま、1リングμ粒子事象を約600分の1に落とすことに成功した。 前年度の核γ線解析と今回の中性カレント陽子リング解析とを組み合わせることにより、中性カレント弾性散乱を効率的に検出することができ、これまで不定性の大きかったその散乱断面積測定に道が開けたといえる。来年度以降、我々はこの解析の最終的なチェックを行い、酸素原子核における中性カレント弾性散乱断面積の測定結果として結実させたいと考えている。
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