2004 Fiscal Year Annual Research Report
超流動ヘリウム中にトラップされた不安定核原子の光ポンピングとレーザー分光
Project/Area Number |
15654035
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下田 正 大阪大学, 理学研究科, 教授 (70135656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
出水 秀明 大阪大学, 理学研究科, 助手 (50294153)
松尾 由賀利 理化学研究所, RIビーム科学研究室, 先任研究員 (50231593)
畠山 温 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (70345073)
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Keywords | 原子核構造 / 核モーメント / 短寿命核 / スピン偏極 / 光ポンピング法 / レーザー分光 / 超流動ヘリウム / スピン緩和 |
Research Abstract |
本研究は、超流動ヘリウム中に不安定核を閉じ込め、ヘリウム中の光ポンピングという一見不可能な方法を用いて、不安定核の電磁気モーメントを測定する、汎用性の高い方法を確立することを目的とする。そのことが、高アイソスピン原子核、特に存在限界(ドリップライン)近傍の原子核の基底状態の電気・磁気モーメントを系統的に測定する道を拓き、原子核構造の理解に大きく寄与する。この方法は、(1)不安定核を高い効率で狭い空間領域にトラップし、(2)多くの核種について高偏極を作り(光ポンピング法)、(3)偏極を長時間保持し(液体ヘリウムの物性)、(4)数の少ない原子核に対して繰り返し測定し(レーザー誘起脱励起光を観測)、(5)不純物原子核の影響が少ない(レーザー光の波長による核種の選別)、という、これまでの困難を全て克服出来るものである。この手法の成否の鍵を握る(2)と(3)を確立するのが本研究の目的であった。 レーザーアブレーション法によってCs原子を液体ヘリウムに導入し、レーザー光ポンピングを行って、90%程度の高い原子スピン偏極度を達成するのに成功した。さらにそのスピン偏極が緩和するのに要する時間の測定にも世界で始めて成功し、約2.4秒という異常に長い緩和時間を得た。これは、私たちが予測したように、液体ヘリウムの特異な物性によって、磁気サブレベル間の遷移(偏極緩和)はほとんど起こらない、すなわち、超流動ヘリウムは原子の種類によらず偏極を保持できる理想的な物質であることを実証するものである。この成果は、萌芽研究として充分なものである。この手法を実際に適用すべく、研究計画をまとめ、基盤研究Aとして申請するに至った。
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Research Products
(1 results)