2005 Fiscal Year Annual Research Report
自由曲面多層膜スーパーミラーによる中性子光学素子の開発
Project/Area Number |
15654043
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
池田 一昭 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 基礎科学特別研究員 (20342743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 裕彦 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 客員研究員 (50249900)
佐藤 広海 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 先任研究員 (20300874)
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Keywords | 中性子光学 / 多層膜スーパーミラー |
Research Abstract |
1.高Q平面多層膜スーパーミラーの開発:前年度から採用している反応性スパッタリング法によりNi単層ミラーの3〜3.5倍の中性子全反射臨界角(3〜3.5Q)を有するNi/Ti平面多層膜スーパーミラー(単層の膜厚分布:41〜1100Å,全総数:532〜1006)を作成し,3Q,3.3Q,3.5Qスーパーミラーにおいて,それぞれ臨界角反射率85%,83%,75%を達成した.また,このような特性を有するミラーを安定に作成できる多層膜成膜システムを確立した.現段階で到達している臨界角反射率は世界最高値(それぞれ94%,93%,92%)の90〜80%程度ではあるが,実用化可能な水準に十分達しており,このようなミラーを曲面化することで曲面光学素子のより一層の高性能化あるいは小型化が可能になると期待される. 2.曲面中性子光学素子の開発:前年度に製作した多重積層放物面型の熱中性子一次元収束素子を用いて,シリコン標準試料の中性子粉末回折実験を実施し,素子の導入によって回折ピークの中性子強度を2.3倍に増大させることに成功した.この実験結果は,中性子回折実験の精度向上や実験時間の短縮に直結する成果として,現在注目されている.ただし,素子の幾何学的構造に起因して回折ピーク像が複数個に分離する作用が不可避なことから,高分解能を要請する実験では回折ピークの分離を考慮したデータ解析手法を新たに確立するなどの工夫が必要である. 本研究の成果によって,高Qスーパーミラーの光学素子への利用や曲面光学素子の存在・活用が広く認知されるようになり,また,このような光学素子が中性子実験に多大に貢献できることが明確に示された.
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