2003 Fiscal Year Annual Research Report
反転対称性の破れに起因した時間揺らぎを見るためのレーザー分光法の開発
Project/Area Number |
15654058
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 耕一郎 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90212034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 正伸 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30303803)
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Keywords | 新分光法 / 反転対称性 / 非線形感受率 / 量子常誘電 |
Research Abstract |
1.SHG時間相関レーザー分光装置の開発、作成および評価 SHG時間相関レーザー分光装置を開発、作成した。この装置は光源にはモードロックTi : Sapphireレーザーを用い、レーザー光をマッハ=ツェンダー干渉計に入射してパルス対を生成する、これを試料に照射し、発生したSHGパルスを分光器内で干渉させてCCDで観測する。マッハ=ツェンダー干渉計はパルス対の位相を固定するよう、フィードバックによって安定化した。装置評価のテスト試料として時間に依存しない静的反転対称性の破れを持つBBO結晶の測定を行い、最長で4.5psまでの相関を観測できることを確認した。これは主に分光器の分解能(Δλ=0.2nm)によって制限されており、より長時間の相関を観測するためには分光器の高分解能化が必要と考えられる。 2.量子常誘電体のゆらぎの測定 チタン酸ストロンチウムは静的な反転対称性の破れを持たないが、低温では反転対称性の破れをともなう奇のパリティを持つ動的な構造変化が存在すると考えられる。そこで、SHG時間相関レーザー分光法を用い反転対称性の破れを表すである二次の非線形感受率x^<(2)>の時間相関関数を測定を行った。その結果、相関関数が時定数約2psの指数関数減衰で表されることが分かった。これは装置の測定可能時間4.5psよりも短い値であり、実際に試料内の動的な構造変化の時間相関関数を今回開発した分光法を用いることで観測できたと考えられる。また、温度を上昇させるにつれSHGの強度は急激に弱くなるのに対し、相関時間には顕著な温度依存性は見られなかった。これは試料の動的構造変化が熱的揺らぎとは異なる量子揺らぎに関連づけられる可能性を示唆している。
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