2003 Fiscal Year Annual Research Report
フィールドジャンプを用いた新しいチャープパルス磁気共鳴測定法
Project/Area Number |
15655009
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
加藤 立久 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (80175702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 貢 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (90342633)
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Keywords | フィールドジャンプ / チャープパルス / 磁気共鳴分光 |
Research Abstract |
磁気共鳴分光法では励起電磁波のパルス化によるフーリエ変換測定法が主流である。スピンを自由に制御できる利点があるが、従来の方法論は強いパルス電磁波で電子スピンを強引に"引き倒す"というものである。一方、時間依存の非断熱遷移理論によれば、励起電磁波の瞬間中心周波数を変化させるようなパルス(チャープパルス)を用いることにより、数桁小さなパルス強度で遷移確率0.5(π/2パルス)や1.0(πパルス)を実現できるというエレガントな予言がなされている。(参考文献:K.Nagaya, Y.Teranishi, and H.Nakamura, J.Chem.Phys. Vol.117(21),9588-9604(2002).)この理論予言の実験的証明を磁気共鳴分光法で実現すべく、フィールドジャンプを用いた測定法を準備している。現在、中村宏樹教授の理論グループと共同研究で、磁場、遷移電磁波周波数、変形チャープに関する各パラメータをモデル計算で算出している。予備的な計算結果によると、各パラメータは技術的に到達可能な範囲にあり、理論的予言の実験による証明が期待できる。問題点は、系のコヒーレンスが保たれている間に変形チャープを実現できるかという事である。その実現のためには、高速の磁場変化、スピン制御を確認する測定方法、チャープ操作の時間間隔より長い寿命を持つ最適な試料の選択などが満足されなければならない。まず半古典的二準位ベクトルモデルにチャープパルス効果を考慮したシミュレーションを実行している。このシミュレーションの必要性は、現実系におけるパルス電源の発生するノイズやリンギング信号が系のコヒーレンスをどれくらい乱すかを知るために行っている。この現実系における安定なパラメータの絞り込みを終わらせた後に装置の設計に移ることになる。
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