2004 Fiscal Year Annual Research Report
フィールドジャンプを用いる新しいチャープパルス磁気共鳴測定法
Project/Area Number |
15655009
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
加藤 立久 城西大学, 理学部, 教授 (80175702)
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Keywords | フィールドジャンプ / チャープパルス / 磁気共鳴分光 / N@C_<60> |
Research Abstract |
磁気共鳴分光法では励起電磁波のパルス化によるフーリエ変換測定法が主流である。従来の方法論は、スピンを制御するために強いパルス電磁波で電子スピンを強引に"引き倒す"というものである。一方、時間依存の非断熱遷移理論で、励起電磁波の瞬間中心周波数を変化させるパルス(チャープパルス)を用いることにより数桁小さなパルス強度で遷移確率0.5(π/2パルス)や1.0(πパルス)を実現できるというエレガントな予言がなされた。(K.Nagaya et al., J.Chem.Phys., 117,9588(2002).)この理論予言を磁気共鳴分光法で確認すべく、フィールドジャンプ測定法を計画した。中村宏樹教授理論グループと共同研究から、磁場、遷移電磁波周波数、変形チャープに関するパラメータの妥当な数値範囲を見当付けた。しかし実験的に実現するためには幾つかの問題点が予想された。系のコヒーレンスが保たれている間に変形チャープを実現するために、高速磁場変化を達成すること、チャープ操作の時間間隔より長い寿命を持つ最適な試料の選択することである。半古典的二準位ベクトルモデルにチャープパルス効果を考慮したシミュレーションを実行し、現実系におけるパルス電源の発生するノイズやリンギング信号が系のコヒーレンスをどれくらい乱すかを知るために行った。研究代表者が平成16年度から城西大学へ異動したため、実際の実験パラメータ検証のために分子科学研究所に出張した。また長い寿命を持つ最適な試料として窒素原子内包フラーレンN@C_<60>を用いることに決定し、試料精製のために高速液体クロマトグラフを城西大学で立ち上げ、平成16年度内に完了した。その結果N@C_<60>の電子スピン緩和時間はT_1、T_2共に数十msecと驚異的に長く、フィールドジャンプによるチャープパルス電子スピン共鳴測定が実現可能であると結論できた。
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