2003 Fiscal Year Annual Research Report
光励起キャリアーの動的過程を観測した光触媒活性評価法の確立と触媒探索への応用
Project/Area Number |
15655077
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山方 啓 北海道大学, 触媒化学研究センター, 助手 (60321915)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹下 寛 三菱化学科学技術研究センター, 分析事業部門・横浜分析センター, 研究員
|
Keywords | 光触媒 / 光励起キャリアー / 時間分解赤外分光法 / 電荷移動速度 / 水分解反応 / 再結合速度 / 活性評価法 |
Research Abstract |
本研究の目的は光励起キャリアーの動的過程を観察することで、光触媒の潜在的な活性を評価し、得られた結果を触媒設計に活かすことである。従来の光触媒に関する研究のほとんどは触媒の構造や電子状態といった静的な測定であり、反応に関しても光照射前後の反応物や生成物の分析に留まっていることが多かった。触媒反応は動的な現象であるため、反応を理解するためには反応を引き起こす光励起キャリアーの動的過程を直接観察する必要がある、と考えられる。 申請者はこれまでに、時間分解赤外分光法を用いると、光励起キャリアーの再結合過程や反応分子への電荷移動過程を明らかに出来ることを報告した。本年度は本手法を光触媒の活性評価法として確立するために、まず、様々な触媒の光励起キャリアーの挙動と定常反応活性との相関を調べた。 タンタル酸ナトリウムは50%を越える高い量子効率で水を分解することで知られる。この触媒は修飾により活性が数桁変化する。本研究では時間分解赤外分光法を用いて、これらの触媒修飾が及ぼす光励起キャリアーの挙動への影響を調べた。その結果、合成時のナトリウム添加量やランタンのドープにより活性の向上した触媒は、たしかに光励起電子の寿命が長くなっており、電子の寿命と定常反応活性には高い相関があった。一方、水への電子移動を促進すると考えられている酸化ニッケルを触媒に担持すると、触媒から酸化ニッケルへ電子が移動し、水への電子移動速度が促進されていることを実際に観測した。この場合、水への電子移動速度は担持量に依存したが、定常反応活性はこの電子移動速度と高い相関があった。すなわち、定常的な光触媒活性は光励起キャリアーの挙動と高い相関があることがわかった。この結果から、時間分解赤外分光法を用いると、様々な触媒修飾が及ぼす定常反応活性への影響を数日かかる生成物分析によらずとも、数分の測定で予測できることが分かった。
|
-
[Publications] Akira Yamakata, Taka-aki Ishibashi, Hideki Kato, Akihiko Kudo, Hiroshi Onishi: "Photodynamics of NaTaO_3 Catalysts for Efficient Water Splitting"The Journal of Physical Chemistry B. 107. 14383-14387 (2003)
-
[Publications] Akira Yamakata, Taka-aki Ishibashi, Hiroshi Onishi: "Effects of Water Addition on the Methanol Oxidation on Pt/TiO_2 Photocatalyst Studied by Time-resolved Infrared Absorption Spectroscopy"The Journal of Physical Chemistry B. 107. 9820-9823 (2003)
-
[Publications] 山方 啓, 石橋孝章, 大西洋: "時間分解赤外分光法を用いた二酸化チタン反応中間体の観察"表面科学. 24. 563-567 (2003)
-
[Publications] Akira Yamakata, Taka-aki Ishibashi, Hiroshi Onishi: "Microsecond Kinetics of Photocatalytic Oxidation on Pt/TiO_2 Traced by Vibrational Spectroscopy"Chemical Physics Letter. 376. 576-580 (2003)
-
[Publications] Kan Takeshita, Yutaka Sasaki, Masahiro Kobashi, Yuki Tanaka, Shuichi Maeda, Akira Yamakata, Taka-aki Ishibashi, Hiroshi Onishi: "Effect of annealing temperature on back electron transfer and distribution of deep trap sites in dye-sensitized TiO_2, studied by time-resolved infrared spectroscopy"The Journal of Physical Chemistry B. 108(in press). (2004)