Research Abstract |
本研究では,重金属として銅,亜鉛,鉛を使用し,水セメント比が0.30,0.40,0.50のセメントペースト供試体を作製した.使用したセメントは普通ポルトランドセメントならびに早強ポルトランドセメントであり,重金属はセメント質量の1%を塩化物として添加した. 実験は,溶出試験としてバッチ試験,タンクリーチング試験を実施するとともに,硬化体内部における重金属の固定形態を検討するため,XRD,TG-DTA,EDX,SEMを用いた分析,観察を行った.なお,ここで用いるバッチ試験は環境庁告知13号試験ならびにドイツ公定試験であるDEV S4試験とした. バッチ試験結果ではセメントの種類によって溶出量が異なり,亜鉛,鉛を重金属として用いた場合には早強ポルトランドセメントを用いた場合の方が,銅を用いた場合には普通ポルトランドセメントを用いた場合の方が溶出量は高くなる傾向が見られた.一方,タンクリーチング試験ではセメントの種類による溶出量の大きな相違は認められなかった.バッチ試験では重金属の溶出を促進させているため,重金属の種類,セメントの種類による結果の相違は,セメント硬化体への重金属の固定形態の相違を示唆するものと思われる.これを確認するために上記の各種分析,観察を実施したが,重金属の添加量が微量であるため固定されている重金属の化学物質を同定することができず,いずれの重金属においても固定形態を明らかとするまでには至らなかった.ただし,硬化体中において銅では水酸化銅として比較的安定に存在し,亜鉛,鉛では水酸化物,塩化物としては存在していない可能性が高いことが考察された. 今後は,これら重金属の硬化体中における存在形態をさらに検討し,固定メカニズムとバッチ試験における溶出挙動との関係を明らかとすることで,タンクリーチング試験で確認されるような長期における溶出挙動を解析的に予測可能としていくことが必要である.
|