2005 Fiscal Year Annual Research Report
有明海沿岸低平地における沖積粘土層の地下風化に伴うヒ素・フッ素発生メカニズム
Project/Area Number |
15656117
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
日野 剛徳 佐賀大学, 低平地研究センター, 講師 (20295033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴 錦春 佐賀大学, 理工学部, 助教授 (20284614)
山西 博幸 佐賀大学, 低平地研究センター, 助教授 (20240062)
下山 正一 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (90136424)
山中 寿朗 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助手 (60343331)
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Keywords | 低平地 / 堆積環境 / ヒ素 / フッ素 / ホウ素 / 酸化還元電位 / 地下水流動 / 地盤環境 |
Research Abstract |
本年度は当該研究の最終年度であり、次の項目に関するとりまとめを行い、総括した。 有明海沿岸低平地における沖積粘土層の堆積環境と酸化還元環境に関する実態調査についてまとめた。本研究の対象とした地域では、いずれも沖積粘土層の上部および帯水層付近で酸化の傾向を示すのが特徴的であった。 沖積粘土層におけるヒ素・フッ素含有量分析、および当該粘土層における微生物の物質循環とヒ素・フッ素の関係に関する安定同位体地球化学的検討結果についてまとめた。まず、間隙水中における溶存態としてのヒ素は一部で検出されたが、環境基準値を超えるまでには至っていない。一方、フッ素およびホウ素については全層を通じて環境基準値を上回る結果が検出された。安定同位体地球化学の観点によれば、粘土層中における土成分としてのTOC、TN、TSの各値が間隙水質の変化とともに変化している地域と必ずしもそうでない地域とがある。土成分および間隙水質双方の変化の伴う地域ほど、フッ素・ホウ素の溶出量が高くなる傾向が認められた。また、土成分中におけるヒ素含有量は認められていることから、溶出に関する潜在性が確認された。バングラデシュにおける事例などに照らして、今後沖積粘土層における酸化の程度によっては必ずしも溶出の懸念は払拭できないことがわかった。 酸素の地下深部への到達メカニズムに関する解析結果についてまとめた。これまでは粘土層と帯水層との間における水質置換を曖昧に考えざるを得ない状況にあったが、むしろ粘土層のほぼ中間に位置する鬼界-アカホヤ火山灰層と帯水層との間の相互作用による地下水流動が粘土層の地盤環境に著しい変化をもたらす可能性を見出し、上述した結果の裏付けとして位置づけた。
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Research Products
(6 results)