2004 Fiscal Year Annual Research Report
海洋微生物ラビリンチュラのドコサヘキサエン酸生成に関する細胞学的解析
Project/Area Number |
15657016
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
野口 哲子 奈良女子大学, 理学部, 教授 (00135823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鍵和田 聡 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (40281662)
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Keywords | ラビリンチュラ / Schizochytrium limacinum / ドコサヘキサエン酸 / 脂肪酸 / 小胞体 / オイルボディー |
Research Abstract |
ラビリンチュラ類は卵菌と不等毛植物の特徴を持つ汽水域に生息する単細胞生物である。Schizochytrium limacinum 21株(SR21株)は多量の脂肪酸を細胞内に蓄積し、なかでも高度不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)を多量に生成する微生物として、近年注目されている。本研究では、SR21株のDHA生成を細胞学的に解析した。まず、SR21株の同調培養系を確立し、100%の遊走子群を得た。この系を用い、遊走子及び遊走子着床後4、8、12、24時間、10日目の栄養細胞で、オイルボディーの形成過程を形態学的に観察し、それに伴う脂質量、及び脂肪酸組成の変化を解析した。 Nile red染色によって生活史の全ての時期にオイルドロップが観察されたが、オイルドロップは遊走子着床後の細胞成長に伴って大きくなり、細胞当たりの数も増加した。電子顕微鏡観察では、パルミチン酸を1、3位に、DHAを2位に持つトリアシルグリセロール(TG)の結晶様構造による縞模様を呈するオイルボディーが観察された。このタイプのオイルボディーは遊走子では余り観察されず、成長中の細胞で出現し、12時間目で細胞質の1/2以上を占めた。成長中の細胞では、小さなオイルボディーが小胞体に接し、小胞体内には観察されないため、オイルボディーは小胞体上で合成されると考えられた。 細胞生長に伴い細胞当たりの脂質量も増加したが、総脂肪酸中のDHAの比率は24時間目以降低下した。そこで脂質を、主にオイルボディーの構成成分であるTGと生体膜成分であるホスファチジルコリン(PC)に分画し、それぞれの脂肪酸組成を解析した。その結果、遊走子及び着床後24時間目の細胞では、PCにおけるDHAの脂肪酸組成がおよそ60%であったのに対し、10日後には10%以下に低下した。一方、TGではDHAの脂肪酸組成に大きな変動は認められなかった。
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Research Products
(2 results)