2003 Fiscal Year Annual Research Report
虹彩の色の多型が光に対する生体リズム同調に果たす役割の生理的解明にむけた基礎研究
Project/Area Number |
15657059
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
樋口 重和 秋田大学, 医学部, 助手 (00292376)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 圭太 九州大学, 大学院・芸術工学研究院, 助手 (40325569)
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Keywords | 生体リズム / 概日リズム / メラトニン / 高照度光 / 虹彩 / 多型性 / 人種差 / 瞳孔 |
Research Abstract |
本研究は虹彩の色の濃淡が光に対するメラトニン抑制に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.被験者は睡眠覚醒リズムに異常のない健康な濃い虹彩をもつアジア系成人男子10名(平均年齢27.2歳)(以下モンゴロイド群)と秋田県に在住の薄い虹彩をもつ欧米系成人男子10名(平均年齢26.4歳)(以下コーカソイド群)であった.最初の実験では,被験者の夜間の唾液中メラトニン濃度の経時変化を調べ,最もメラトニン濃度が高くなる時刻を求めた.被験者は暗い部屋(<15ルクス)で午後9時から午前6時まで過ごし,その間に唾液を1時間毎に採取した.メラトニン濃度の平均ピーク時刻はモンゴロイド群とコーカソイド群でそれぞれ4:00と3:24で両群に統計的な有意差は無かった.2回目の実験では光曝露に対するメラトニンの抑制率を調べた.実験はメラトニン濃度のピーク時刻の5時間前から開始した.最初の3時間は被験者を暗い部屋で眠らせ,次の2時間に高照度光(1000ルクス)に曝露した.唾液は曝露前と曝露中1時間後と2時間後に採取した.唾液の測定と同時に瞳孔の面積も測定した.光曝露前および光曝露時の瞳孔面積には両群で有意差は無かった.光に対するメラトニンの抑制は曝露前の値を基準として抑制率を指標とした.光曝露1時間後のメラトニンの抑制率はモンゴロイド群とコーカソイド群で有意な差は認められなかったが,2時間後の抑制率には両群で有意差が認められた.モンゴロイド群のコーカソイド群の平均抑制率はそれぞれ66.2%と88.9%であり,コーカソイド群の抑制率が有意に高かった.以上の結果から,虹彩の色が薄いコーカソイド群で虹彩が濃いモンゴロイド群に比べて光に対するメラトニンの抑制反応に敏感であることが分かった.このことから虹彩の色の違いによって,生体リズムの光の対する反応も異なることが示唆された.
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