Research Abstract |
本年度に得られた研究成果は以下に示すとおりである。 1)筆者らが発見したブドウ枯葉脂質から大量のエチレンを生成する微生物は,糸状菌16菌株(Penicillium citrinum KIOBRA1,Aspergillus sclerotiorum KIOBRA2,Penicillium pinophilum KIOBRA3,Gongronella butleri KIOBRA11,Aspergillus tamarii KIOBRA12,Eupenicillium sheariiKIOBRA13,Monascucus purpureus KIOSF1,Absidia corymbifera KIOSF2,Rhizomucor pusillus KIOSF3,Penicillium commune KIOSF4,Trichoderma hamatumKIOSF5,Verticililium coccosprum KIOSF6,Penicillium ochochloron KII1,Umbelopsis isabellina KII2,Cunninghamella ochia KII3,Penicillium adametzii KII4),そして細菌6菌株(Bacillus sphaericusKIOSB15,Bacillus sp.KIOSB17,Bacillus bataviensis KIOSB21,Bacillus sp.KIOSB29,Bacillus mycoides KIOSB43,Bacillus megateriumKIOSB44)であった。いずれの菌も脂質からエチレンを生成するものとしては初めて同定されたものである。 2)近年,食と農業に対する関心が社会的に高まっており,食の安全といった観点から,有機農産物への需要が急激に増加している。しかし,海外から輸入しているバナナなどの場合,必ず未熟の果実でなけばならないと植物防疫法で定められているため,国内で,石油から生成した工業用エチレンを用いて追熟処理が行われているのが現状である。日本で有機JASマークをつけて販売するためには,石油生成エレン以外の物質,例えばJAS規格で認められているエタノールなどの資材を高濃度で用いなければならなく,非常に危険であるため,早急に安全な果実の追熟技術を開発する必要がある。そこで,自作した200Lの培養槽を用いて,エチレン生成細菌が生産するブドウ枯葉からのエチレン(微生物生成エチレン)を用いてバナナの追熟促進効果を調査したところ,果実の追熟を充分に促進させることができた。 以上の結果から,微生物による有機物,特にブドウ枯葉中の脂質からは大量のエチレンが生成するので,微生物生成エチレンの工業化は可能であることを明らかにした。今後,その生成メカニズムをさらに解明するとともに,効率的な生産方式や簡易な液化・濃縮技術の開発を検討する必要がある。
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