2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15658033
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
柴田 均 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (40032601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽我部 国久 島根大学, 教育学部, 教授 (80093649)
橋本 道男 島根大学, 医学部, 助教授 (70112133)
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Keywords | 炭酸アニオンラジカル / カルボニルストレス / タンパク重合化 / メチルグリオキサール |
Research Abstract |
生体内でもメーラード反応が起こり、糖がタンパク質のアミノ基と反応して生成されるAGE化反応生成物(Advanced Glycated End Products)にはメチルグリオキサル(MG)、グリオキサル、3-デオキシグルコソンなどのジカルボニルがある。近年この種のジカルボニル化合物は生体内で毒物として挙動し、これらの生体内での蓄積は「カルボニルストレス」と呼ばれるようになってきた。MGの生体内成分に対する作用は数多くの研究結果が報告されているが、われわれはMGが炭酸イオンと反応して炭酸アニオンラジカルが生成する可能性を得て、この研究の端緒とした。 本年度は、1)炭酸アニオンラジカルが生成することを証明すること、2)反応メカニズムを明らかにすること、そして3)炭酸アニオンラジカルと生体成分との反応性を検証することを研究の対象とした。 1)炭酸とMGが反応して炭酸アニオンラジカルが生成することを、同様の強い酸化力を有するヒドロキシルラジカルと区別するためにヒドロキシルラジカルの補足剤共存下で、MCLAの発光、乳酸脱水素酵素の失活、リゾチームの重合化反応で確認した後、これらのいずれもが炭酸イオンとMG濃度の増加に依存することを確認した。また、DMPOをスピンとラップ剤として用いた場合、炭酸イオンと、MGが共存する場合のみDMPO-OHアダクトのシグナルを得た。ヒドロキシルラジカルも同じスペクトルを与えるが、この反応系では異なる2種のヒドロキシルラジカル補足剤を添加してあり、ヒドロキシルラジカルの生成に基づくシグナルではないので、DMPOが炭酸ラジカルと反応した後加水分解されてDMPO-OHを導くとの考察を支持する結果を得た。これらのESR測定結果は炭酸アニオンラジカルが発生することを明確に指示した。 2)つづいて反応機構を明らかにするために、NMR.MASS, IRスペクトルの解析により、MG由来の反応生成物を同定しようとしたが、炭酸と反応後のMRは常に解析不能な複数のシグナルを与え、反応生成物を決定するに至らず、副次的な反応を経る複合的な反応経路であることが推測された。反応メカニズムの解明は必須であり、次年度も継続する必要がある。 3)生体成分との反応性は、上述した乳酸脱水素酵素の失活、リゾチームの重合化が起こることを示したが、特にタンパク質の重合化のメカニズムに着目し、アミノ酸であるトリプトファンが炭酸アニオンラジカル二より酸化されて生成するキニュレニンやヒドロキシキニュレニンを介して重合化が起こることを明らかにした。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Kim, H., Ikegami, K., Nakaoka, M., Yagi, M, Shibata, H., Sawa, Y.: "Characterization of aspartate aminotransferase from the cyanobacterium Phormideum lapideum"Biosciences, Biotechnology, and Biochemistry. 67. 490-498 (2003)
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[Publications] R.Madhusudhan, T.Ishikawa, Y.Sawa, S.Shiteoka, H.Shibata: "Characterization of an ascorbate peroxidase in plastids of tobacco BY-2 cells"Physiologia Plantarum. 117. 550-555 (2003)
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[Publications] Kim, H., Nakaoka, M., Yagi, M, Ashida, H., Hamada, K.Shibata, H., Sawa, Y.: "Cloning, structural analysis and expression of the gene encoding aspartate aminotransferase from the thermophilic cyanobacterium Phormideum lapideum"Journal of Bioscience, Biotechnology. 95. 421-424 (2003)
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[Publications] R.Madhusdhan, T.Ishikawa, Y.Sawa, S.Sigeoka, H.Shibata: "Post-transcriptional regulation of ascorbate peroxidase during light adaptation of Euglena gracilis"Plant Science. 165. 233-238 (2003)
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[Publications] Shibata, H., T.Nagamine, Y.Wang, T.Ishikawa, Y.Sawa: "Generation of reactive oxygen species from hinokitiol under near-UV irradiation"Biosciences, Biotechnology, Biochemistry. 67. 1996-1998 (2003)
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[Publications] Ueno, M., H.Shibata, J.Kihara, Y.Honda, S.Arase: "Increased tryptophan decarboxylase and monoamine oxidase activities induce Sekiguchi lesion formation in rice infected with Magnaporthe grisea"Plant Journal. 36. 215-228