2004 Fiscal Year Annual Research Report
マツノザイセンチュウに感染したクロマツにおける防御系遺伝子の発現様式
Project/Area Number |
15658049
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
二井 一禎 京都大学, 農学研究科, 教授 (50165445)
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Keywords | マツノザイセンチュウ / クロマツ / Botrytissinerea / 防御関連遺伝子 / RT-PCR / フェニルプロパノイド経路 / 抗酸化経路 / 遺伝子発現誘導 |
Research Abstract |
申請者らが昨年度確立したクロマツ材組織からのRNA抽出手法ならびにクロマツの防御関連遺伝子の塩基配列情報に基づいて、クロマツ苗木での遺伝子発現解析を行った。まず、クロマツにおける部分塩基配列を決定した遺伝子群の中で、特にフェニルプロパノイド経路及び抗酸化経路に関与する6種の遺伝子に着目し、RT-PCR法による遺伝子解析手法を確立した。この手法を利用して、マツノザイセンチュウをはじめとする病原体感染及び物理的傷害を受けたクロマツの材組織における上記遺伝子の発現誘導様式を調査した。その結果、強病原性線虫であるマツノザイセンチュウ接種とクロマツに対し病原性を持たない糸状菌Botrytis cinerea接種を受けたクロマツ苗では、接種後に発現誘導される遺伝子の種類に明確な違いは認められなかったが、発現誘導までに要する時間については、後者の反応が前者の反応よりも迅速である点で異なることが明らかになった。この結果は学会発表済みである(Takeuchi et al;日本林学会2004,ヨーロッパ線虫学会2004)。このことから、病原性の異なる複数の接種源を用いて宿主樹木の感染応答、特に上記遺伝子群の発現様式を時間的、空間的に追跡調査することにより、樹木病害の感染成立もしくは不成立に至る要因を解明することが可能であると示唆された。また、本年度の解析対象としなかった他の防御関連遺伝子、特に本年度着目した二つの経路の下流で機能する遺伝子群においては、接種源の病原性により宿主樹体内で発現誘導に差が生じている可能性もあり、今後さらに研究を進める必要がある。(657文字)
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