2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15658060
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
庄司 隆行 東海大学, 海洋学部, 助教授 (00241349)
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Keywords | 嗅覚 / 深海魚 / オオグソクムシ / 嗅球 / 嗅上皮 |
Research Abstract |
深海域に生息する魚類の嗅覚系は索餌行動や繁殖行動において大きな役割を果たすと考えられる。本年度は、実験魚として駿河湾500-600m以深または富山湾300m以深において捕獲されたヘラツノザメDeania calcea、フトカラスザメEtmopterus princeps、ノロゲンゲAllolepis hollandi、クロゲンゲLycodes diapterus nakamurae、タナカゲンゲL.tanakae、コンゴウアナゴSimenchelys parasitica、およびホラアナゴSynaphobranchus affinisを用い、嗅覚器および関係脳組織の形態観察と電気生理学的および行動学的手法による嗅覚応答の測定を行った。また、深海域におけるスカベンジャーとして重要な生態学的地位を占めると考えられるオオグソクムシBathynomus doderleiniも同様に用いた。 ゲンゲ類の嗅覚器はきわめて単純な構造を持ち、嗅板は1枚のみであった。しかし、嗅板の両側には多くの繊毛・微絨毛嗅細胞が混在して見られた。他魚種と異なり、非感覚性繊毛はほとんど見られなかった。一方、アナゴ類の嗅覚系はよく発達しており、繊毛の密度は高く両生類のそれに近い形態であった。また、嗅神経束が2本以上の太い分枝を形成していた。これは、嗅覚情報の処理能力の高さを示している。 サメ類の嗅上皮表面積、嗅球はさらに大きく、かつ嗅球における糸球体層が明瞭であって、発達した嗅覚情報の処理機構を持つことが明らかであった。また、アミノ酸に対するEOGおよび嗅球ニューロンのインパルスの記録を試み、サメ類もアミノ酸をニオイとして受容していることを確認した。 オオグソクムシはサンマ魚肉に強く誘引され、本種吐しゃ物を忌避することがわかった。しかし、アミノ酸、胆汁酸塩に対する明らかな誘引、忌避行動は見られなかった。
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