2003 Fiscal Year Annual Research Report
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15658082
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
束村 博子 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (00212051)
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Keywords | 脳の性分化 / ラット / 甘味嗜好性 / 性ステロイドホルモン / 新生児 / サッカリン / アンドロジェン / エストロジェン |
Research Abstract |
本研究は、味覚の雌雄差をもたらす脳の性分化メカニズムを明らかにすることを目的として行われた。味覚のうち、特に甘味に対しメスがオスに比べて高い嗜好性を示すことが報告されていることから、ラットを用いて過去の報告と一致した結果が得られるかどうかを確かめた。カロリーとは関係なく、甘味のみに対する嗜好性を確かめるためにサッカリン水溶液を用いた。雌雄ラットに、0.25、0.5、あるいは0.75%サッカリン水溶液および対照として水道水を与え、水摂取に対するサッカリン摂取の割合を得た。その結果、ウィスター今道系のラットを用いた場合、メスがオスより高い甘味嗜好性を示すことが確かめられた。この嗜好性の傾向は、卵巣除去メスと精巣除去オスとを比べた場合にも認められた。また、生後一日日の新生オスラットに精巣除去手術を施し、オス型脳への性分化を阻害したラットを用い、成熟後に同様の実験を行ったところ、甘味嗜好性においてメスと同様の傾向が認められた。これらのことから、甘味に対する嗜好性の性差は成熟後の性腺由来の性ステロイドホルモンによるものではなく、新生時期の不可逆的な脳の性分化に起因することが示唆された。 一方、LSD系ラットを用いて、同様の実験を行った結果、これまでの結果とは異なり、オスがメスに比べて高い甘味嗜好性を示すことが明らかとなった。この事実は、用いるラットの系統によっては、メスの甘味嗜好性が高いとはいえないことを示している。すなわち、「メスは高い甘味嗜好性を示す」というこれまでの概念は普遍的でない可能性が高いことを示すものである。これらの結果をふまえ、甘味嗜好性に絶対的な雌雄差があるか否かについてさらに検討するための研究を現在も継続して行っている。
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[Publications] Moriyama, R.: "Glucoprivation-induced Fos expression in the hypothalamus and medulla oblongata in female rats."Journal of Reproduction and Development. 49. 151-157 (2003)
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[Publications] Kinoshita, M.: "A rat model for the energetic regulation of gonadotropin secretion : Role of the glucose-sensing mechanism in the brain."Domestic Animal Endocrinology. 22. 65-76 (2003)
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[Publications] Kondo, J.: "Lactation-associated infertility in Japanese Monkeys (Macaca fuscata) during the breeding season."Zoo Biology. 22. 65-76 (2003)
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[Publications] Moriyama, R.: "In vitro increase in intracellular calcium concentrations induced by low or high extracellular glucose levels in ependymocytes and serotonergic neurons of the rat lower brainstem."Endocrinology. 145(In press). (2004)
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[Publications] Kinoshita, M.: "Fourth ventricular alloxan injection suppresses pulsatile luteinizing hormone release in female rats."Journal of Reproduction and Development. 50(In press). (2004)
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[Publications] 束村博子: "ブルーバックス「生命をあやつるホルモン」"講談社. 238 (2003)
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[Publications] 束村博子: "ジェンダーを科学する"ナカニシヤ出版(印刷中). (2004)