2003 Fiscal Year Annual Research Report
生物応答における多様性創出の鍵となる分子機構の原理に関する研究
Project/Area Number |
15658108
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷 史人 京都大学, 農学研究科, 助教授 (70212040)
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Keywords | ストレスタンパク質 / Hsp70 / 多様性 / 自然免疫 / CD40 / 生物種 / 抗原提示細胞 |
Research Abstract |
本研究は、すべての生物種において普遍的に保存され、かつ生命維持に必要不可欠なストレスタンパク質(Hsp)の一次配列に存在する局所的に極度に多様化した可変領域の生物学的意義について明らかにし、生物応答における多様性創出の鍵となる分子機構の原理を確立することを目指している。Hsp70のC末端領域のアミノ酸配列は、大腸菌とウシの間での相同性は10%にも満たないほど変化に富んでおり、またその残基数も生物種間において大きく異なっている。 今年度は、進化系統的において隔たる生物種であるマウスと大腸菌のHsp70と、多細胞生物の生体防御にかかわっている貧食細胞や抗原提示細胞に存在する自然免疫系のパターン認識受容体であるCD40表面抗原との相互作用を解析した。 その結果、マウスHsp72のC末端を順次欠失させるとd(1-615),d(1-562),d(1-543)は腹腔マクロファージと強い結合を示した。しかし、基質結合ドメインを欠いたd(1-384)は結合能を失った。このことから自然免疫担当細胞とHsp72との結合にはHsp70の543残基以後のC末端の一次構造上多様性に富む構造が重要であることを明らかにした。 マウスpro-B細胞株のBa/F3細胞をもとに、マウスCD40を発現したトランスフェクタントを作製した。マウスHsp72とそのC末端欠失変異体ならびに大腸菌Hsp70であるDnaKのmCD40-Ba/F3細胞への結合についてフローサイトメーターを用いて調べたところ、いずれの組み換え体タンパク質も結合しなかった。この結果は、CD40がHsp70の受容体ではないのか、あるいは、Hsp70との結合にはCD40分子以外の補助因子の存在が必要であるということを示唆していると考えられた。
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